エクササイズにおける中殿筋の活性レベルとクラムシェルの意義
- フィジオプラス

- 11 時間前
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はじめに
リハビリテーションや運動指導の現場において、中殿筋(Gluteus Medius)へのアプローチは、骨盤の安定化や下肢のバイオメカニクスの改善に不可欠です。その中でも、側臥位で行うクラムシェルエクササイズは、運動療法の初期段階で選択される種目として用いられています。
しかし、近年の筋電図(EMG)研究、特にBorenら(2011)の報告により、各エクササイズが中殿筋に与える負荷強度の実態が明らかになってきました。
この記事では、文献に基づき中殿筋の活性レベルを整理し、クラムシェルの適切な臨床的位置づけと、最終的に目指すべき段階的なエクササイズ処方の展開について解説します。
中殿筋の機能解剖と臨床的役割

中殿筋は前部、中部、後部の3つの線維束に分かれており、歩行時や片脚立位時の骨盤の側方安定性を担っています[1]。特に後部線維は、股関節の外転に加えて外旋を補助する役割を持ち、膝関節の外反ストレスの制御に寄与します[2]。
臨床的に、中殿筋の不全はトレンデレンブルグ徴候や腰痛症、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)などと密接に関連しており、その機能回復はリハビリテーションの最優先事項の一つです。
クラムシェル・エクササイズのEMG活性と特徴

クラムシェルは、股関節屈曲45度、膝屈曲90度の側臥位から、足部を接したまま上側の膝を開くエクササイズです。
筋活性のレベル
Borenら(2011)の研究によれば、クラムシェルにおける中殿筋の活性は 平均38.8% MVIC(最大等尺性収縮に対する割合)とされています[3]。
大腿筋膜張筋(TFL)との関係
クラムシェルの大きなメリットは、代償的に働きやすい大腿筋膜張筋(TFL)の活動を抑えつつ、中殿筋を分離して活性化できる点にあります。Selkowitzら(2013)は、TFLに対する中殿筋の活動比率(MME指数)において、クラムシェルが非常に優れた特性を持つことを示しています[4]。
筋力増強の閾値とエクササイズの比較
ここで重要となるのが、運動強度の定義です。Borenらは、エクササイズの強度を以下のように分類し、リハビリテーションの指針としています[3]。
低強度(0–20% MVIC)
中強度(21–40% MVIC)
高強度(41–60% MVIC)
最高強度(61% MVIC以上)
エクササイズにおける中殿筋(GMed)の活性レベル[5]

クラムシェル・エクササイズの落とし穴
Borenらの研究データが示す通り、筋力増強を狙うには60% MVIC以上の負荷が推奨されます。 クラムシェルの活性レベル(約38%)はこの閾値に達していないため、本種目はあくまで「準備運動(活性化:Activation)」としての役割が主となります。
臨床的アドバイス
初期段階:痛みの強い時期や、中殿筋の収縮感覚が乏しい症例に対しては、TFLの代償を防ぎつつ「目覚めさせる」目的でクラムシェルを選択します。
中期以降(荷重下への移行):単にクラムシェルの回数を増やすのではなく、早期にサイドブリッジや片脚スクワット、ラテラル・ステップアップといった、より高活性が得られる「荷重下エクササイズ」へ促すことが必要です。

日常生活やスポーツ動作の多くは、荷重下かつ複雑な連鎖運動の中で行われます。低負荷な非荷重運動に留まらず、エビデンスに基づいた段階的負荷(プログレッション)を適用し、真に機能的な中殿筋の獲得を目指すことが重要です。
この記事のまとめ
クラムシェルは中殿筋の「分離・活性化」には優れているが、強度は中程度(38% MVIC)です。
筋力増強を狙う閾値(60% MVIC以上)を満たすためには、荷重下での高強度種目が必要です。
クラムシェルはあくまでエクササイズの導入期で実施すべき種目であり、最終的には荷重下での安定性を引き出すエクササイズ指導が不可欠となります。





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