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紙風船エクササイズで筋活動はどう変わる?外的フォーカスの効果と運動指導への活用

11 分前
読了時間: 4分

はじめに


リハビリや運動指導の現場では、体幹の安定性向上や特定の筋群へのアプローチを目的として、プランクやチェストプレスなどのエクササイズが広く用いられています。


しかし、実際の指導場面では、肩や首に余計な力が入ってしまったり、目的とする筋群をうまく働かせられなかったりする場合も多く見られます。


こうした問題に対して、「お腹に力を入れて」など、身体の動きや筋肉を意識させる内的フォーカス(Internal Focus)ではなく、「物を潰さないように支える」など、動作の結果に意識を向けさせる外的フォーカス(External Focus)を活用することで、筋活動や力の発揮を高められる可能性があります。


本記事では、室伏広治氏らが考案した、紙風船を用いた運動アプローチPaper Balloon Methodについて、研究結果をもとに、その特徴や筋活動への影響、運動指導への応用方法をわかりやすく解説します。



紙風船エクササイズはなぜ効果的なのか?


Paper Balloon Method(PBM)は、紙風船を使って筋活動や力の発揮を調整する運動方法です。


このエクササイズでは、「できるだけ強く押しながら、紙風船を潰さないようにする」という指示を用います[1–3]。


Physioplusのポスター。紙風船エクササイズ実施時の声掛けのポイントという見出しと、ボールを両手で押す男性、注意文がある。

硬い物を押す場合は、強い力を加えることに意識が向きやすくなります。


一方、紙風船のように外からの力で変形しやすい物では、潰さないように力を調整しながら押す必要があります。


つまり、紙風船を使うことで、つまり、「強く押すこと」と「潰さないように力を調整すること」を同時に求められるのが、このエクササイズの特徴です。


こうした特徴によって、通常のエクササイズとは異なる筋活動が生じ、上肢や体幹の筋群が協調して働く可能性が考えられます[1, 2]。



紙風船を使うと筋肉の働きはどう変わるのか?


室伏らの研究では、健常成人を対象に、硬いプラスチック製のシリンダーを全力で押す方法(CIM)と、紙風船を潰さないように押す方法(PBM)を比較し、上肢や肩甲帯の筋活動を表面筋電図で測定しました[1]。


Physioplusの図解。紙風船を潰さない押し方と硬いプラスチック製器具を全力で押す方法の筋活動比較を示す、2人のイラスト。

その結果、PBMでは従来の方法と比較して、僧帽筋下部と広背筋の筋活動が有意に増加した一方、大胸筋、僧帽筋上部、前鋸筋の筋活動は有意に低下しました。


具体的には、僧帽筋下部の筋活動は約4.2倍に増加し、大胸筋は約71%低下しました。


これらの結果から、紙風船を潰さないように力を調整することで、同じチェストスクイズでも筋活動のパターンが変化することが示されています。


Physioplusの図表。紙風船を使うと筋肉の働きはどう変わる?という横棒グラフで、紙風船と硬いプラスチックの筋活動を5筋で比較。


紙風船エクササイズを運動指導にどう活かせる?


リハビリや運動指導では、目的とする筋肉をうまく働かせられなかったり、特定の部位に余計な力が入ってしまったりする場合があります。


このような場合、エクササイズの種目や負荷設定を変更するだけでなく、身体の外にあるものへ意識を向ける「外的フォーカス」を活用することも一つの方法です。


例えば、プランクで体幹の筋活動を促したい場合や、上肢のエクササイズで肩や首に力が入りやすい場合には、紙風船を使って力の加え方を調整する方法が考えられます。


また、スクワットで膝が内側に入ってしまう場合には、「膝を外に開いて」と指示するだけでなく、「膝を正面の目印に向けてしゃがんでみましょう」と伝えるなど、身体の外にある目標に意識を向けてもらう方法も考えられます。


このように、運動指導では「どの筋肉を意識させるか」だけでなく、「何に意識を向けてもらうか」も重要です。


普段の指導で思うような反応が得られないときこそ、伝え方や注意を向ける対象を変え、実際の動作にどのような変化が生じるかを確かめてみることが大切です。


まとめ


今回紹介した紙風船エクササイズでは、「強く押しながらも、潰さない」という条件によって、大胸筋や僧帽筋上部の活動が低下し、僧帽筋下部や広背筋の活動が増加することが報告されています。


こうした筋活動の変化は、肩や首に余計な力が入りやすい場合や、目的とする筋肉をうまく働か

せられない場合に、運動指導の選択肢を広げる可能性があります。


つまり、運動指導では、負荷を増やしたり、筋肉を直接意識させたりするだけでなく、外的フォーカスを活用して、筋肉の働き方を変えることも一つの方法です。


大切なのは、どの筋肉を使うかを細かく指示するだけでなく、どのような条件を与えれば、目的とする動作を引き出せるかという視点です。



参考文献


  1. Murofushi, K., Yamaguchi, D., Hirohata, K., Furuya, H., & Mitomo, S. (2022). Variations in upper limb and trunk muscles activation during isometric exercises with or without exertion of control. Isokinetics and Exercise Science, 30(3), 1–11.

  2. Murofushi, K., Oshikawa, T., Kaneoka, K., Yamaguchi, D., Hirohata, K., Furuya, H., Mitomo, S., Akuzawa, H., & Yagishita, K. (2022). The effect of external-focus using a paper balloon on the activity of upper limb and trunk muscles during static and dynamic tasks. Isokinetics and Exercise Science, 30(4), 1–11.

  3. Murofushi, K., Oshikawa, T., Akuzawa, H., Yamaguchi, D., Hirohata, K., Furuya, H., Mitomo, S., Kaneoka, K., & Yagishita, K. (2022). Trunk muscle activation in side plank exercises with and without external-focus instruction. Isokinetics and Exercise Science, 30(4), 1–8.

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