キューイングとは?運動指導で伝わる声掛けと4つの実践ポイント
はじめに
運動指導の現場で、「きちんと説明しているつもりなのに、思うように動いてもらえない」と困った経験はありませんか?
こうしたとき、指導者の声掛けを少し変えるだけで、相手の動きが変わることもあります。
運動学習の分野では、言葉によって相手の注意をどこに向けるかという考え方を注意の焦点(Focus of Attention)と呼びます。
そこで本記事では、キューイング(声掛け)に関する研究をもとに、言葉の選び方が動作に与える影響を解説します。
さらに、思うように動いてもらえないとき、どのように声掛けを工夫すればよいのか、明日からの運動指導に活かせる実践的なポイントを紹介します。
キューイングとは?運動指導における声掛けの基本
キューイングとは、言葉を使って動作の方向や意識するポイントを伝え、適切な動きを引き出すための指導方法です。

例えば、スクワットで「膝を伸ばして」と伝える場合と、「床を押して」と伝える場合では、同じ動作を指導していても、相手が意識するポイントは異なります。
このように、声掛けは単に動作を説明するだけでなく、相手の注意をどこに向けるかにも影響します。
そのため、運動指導では、何を伝えるかだけでなく、その言葉によって相手が何を意識し、実際にどのように動いたかを確認することが大切です。
では、声掛けによって注意の向け方はどのように変わるのでしょうか。
運動学習の研究では、こうした注意の向け方を「内的焦点」と「外的焦点」の2つに分類しています。
内的焦点と外的焦点|声掛けによって変わる注意の向け方
運動学習の研究では、運動中に注意をどこへ向けるかによって、「内的焦点」と「外的焦点」の2つに分類されます[1]。
内的焦点(Internal Focus) | 自分の身体や身体の動きに注意を向けること。例えば、「膝を伸ばして」「肩甲骨を寄せて」といった声掛けが該当します。 |
外的焦点(External Focus) | 身体の外にある対象や、動作によって生じる結果に注意を向けること。例えば、「床を押し離して」「バーを天井に向けて押して」といった声掛けが該当します。 |
例えば、スクワットで立ち上がるときに「膝を伸ばして」と伝えると、膝の動きに注意が向きます。一方、「床を押して」と伝えると、床に力を加えることに注意が向きます。
どちらも立ち上がるための声掛けですが、身体の動きを意識するのか、動作によって生じる効果を意識するのかという違いがあります。
相手に伝わるキューイング(声掛け)の4つの工夫とは?
では、実際の運動指導で、どのように声掛けを工夫すればよいのでしょうか。
ポイントは、相手が何を意識すればよいのか、どのように動けばよいのかが伝わる言葉を選ぶことです。
ここでは、現場でよく使われる4つの声掛けを例に、具体的な工夫を紹介します。
運動場面 | 一般的な声掛け | 言い換えの例 |
立位姿勢 | 胸を張りましょう | 身長を3cm高くするイメージ |
ヒップヒンジ | 股関節を曲げましょう | 股関節で棒(タオル)を挟むように |
バードドッグ | 腰を反らさないように | 手と足を遠くに伸ばすイメージ |
肩の力み | 肩を下げましょう | 肩と耳の距離を広げるイメージ |
相手に伝わる声掛けの4つのポイント
1. 身体の動きを具体的なイメージに置き換える

「胸を張る」という声掛けでは、肩に力が入ったり、腰を過剰に反らしたりすることがあります。
そこで、「身長を3cm高くするイメージ」と伝えることで、胸だけでなく、身体全体を上に伸ばすような動きをイメージしやすくなります。
2. 道具や環境を利用して動きを伝える

「股関節を曲げましょう」と説明しても、うまく動けない場合があります。
そのようなときは、股関節の付け根に棒やタオルを当て、「挟むように動かしましょう」と伝えることで、動かす方向や位置を理解しやすくなります。
また、「お尻を後ろの壁に近づけましょう」のように、身体の外にある目標物を利用すると、動作の結果に注意を向けやすくなります。
3. 動きの方向や目標を明確にする

バードドッグで「腰を反らさないように」と伝えても、どのように動けばよいのかわからない場合があります。
そこで、「手と足を遠くに伸ばすイメージ」と伝えることで、動かす方向や目指す姿勢をイメージしやすくなります。
4. 身体の位置関係をわかりやすく伝える

「肩を下げましょう」と伝えても、肩の動かし方がわからず、余計に力が入ってしまうことがあります。
そのような場合は、「肩と耳の距離を広げるイメージ」と伝えることで、肩をどの方向に動かせばよいのかを理解しやすくなります。
まとめ
運動指導では、声掛けを少し変えるだけで、相手の動きが変わることがあります。
大切なのは、指導者が何を伝えたかではなく、相手にどう伝わり、実際にどう動けたかということです。
同じ言葉でも、受け取り方や理解の仕方は人によって異なります。だからこそ、相手の反応や動作を観察しながら、必要に応じて伝え方を工夫することが重要です。
一方的に伝えるのではなく、相手の動きを確認しながら伝え方を調整することが、運動指導の質を高めることにつながります。





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