神経発達から考えるエクササイズとは?難易度設定と段階的な進め方
- 3 日前
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はじめに
リハビリや運動指導では、対象者の状態に合わせてエクササイズを選び、段階的に難易度を高めていきます。
しかし、「なぜこの種目の次に、この種目を行うのか」を明確な基準で説明することは、意外と簡単ではありません。
そこで参考になるのが、乳幼児が成長する過程で身につけていく神経発達プロセス(Neurodevelopmental Sequence:NDS)です[1]。
この考え方はヒトが仰向けやうつ伏せから、寝返り、四つ這い、片膝立ち、立位・歩行へと段階的に姿勢や動きを獲得していく発達過程を捉えます。
本記事では、この考え方をもとに、神経発達エクササイズを「基礎・移行・機能」の3段階に整理し、目的に応じた種目の選び方と進め方を解説します。
神経発達エクササイズの難易度を決める3つのポイント
エクササイズの難易度を考えるとき、負荷量や可動域だけで判断するのではなく、姿勢や身体をどのように支えているかという視点も重要です。
その考え方の一つが、神経発達プロセス(NDS)と、それを臨床に応用したDynamic Neuromuscular Stabilization(DNS)です。
ヒトの運動発達では、横隔膜・骨盤底筋・腹壁・脊柱起立筋などが協調して体幹を安定させ、その土台の上で四肢の運動や移動動作を獲得していきます[2]。
DNSでは、この発達過程を参考に、仰臥位や腹臥位、四つ這い、片膝立ちなどの姿勢を用いながら、姿勢や動作のコントロールを段階的に高めていきます[3]。
この考え方をエクササイズの難易度設定に応用すると、主に次の3つのポイントに整理できます。
支持基底面の広さ | 身体を支える面が広いほど安定しやすく、狭くなるほど姿勢制御が求められる。 |
重心の高さ | 重心が低い姿勢から高い姿勢になるほど、バランスや姿勢制御の要求が高まる。 |
四肢の自由度 | 四肢を支持に使う状態から、支持しながら一部の四肢を動かす状態へ進むほど、より高い身体コントロールが求められる。 |
神経発達段階に沿ったエクササイズ・プログレッション
ここからは、神経発達プロセス(NDS)の考え方をもとに、エクササイズを次の3段階に分けて紹介します。


Fundamental Level(基礎レベル) | 非荷重姿勢での安定化/ローリングから支持動作へ |
Transitional Level(移行レベル) | 非荷重位から荷重位へ移行する |
Functional Level(機能的レベル) | 立位での統合運動 |
支持基底面や重心の高さ、四肢の自由度を変化させながら、より機能的な動作へと段階的に進めていきます。
Fundamental Level(基礎レベル):非荷重姿勢での安定化
発達的には、仰臥位や腹臥位など、乳幼児期の初期段階にあたります。まずは呼吸と体幹を協調させ、四肢を動かすための安定した土台をつくることを目的とします。
3-Month Supine Breathing(仰向けでの呼吸エクササイズ)
生後3か月頃の股関節屈曲位を再現した仰臥位で、呼吸を通して体幹の安定性を高めるエクササイズです。
目的
股関節を屈曲位に保ち、横隔膜・骨盤底筋・腹壁が協調して働きやすい状態をつくります。
エクササイズ実施上のポイント
骨盤・腰椎をニュートラルに保ちながら呼吸を行います。腰椎が過度に反ったり丸まったりしないよう注意します。
実施上の注意点
吸気時に胸郭が前方だけでなく、側方・後方にも広がっているかを確認します。また、呼吸に伴って腰椎や骨盤の位置が大きく変化していないかを視診・触診で確認します。
Prone Chin-tuck(うつ伏せでの頸椎安定化)
腹臥位で肘をしっかり床に押し付けて支持し、その安定した肩甲帯の上で頚椎のインナーマッスルを働かせながらチンタックを行う種目です。
目的
肘での支持を通じて肩甲帯の安定性を高め、その上で頚部と肩甲帯を分離してコントロールする感覚を養います。
エクササイズ実施上のポイント
肘で床をしっかり押し続けながら、顎を軽く引く動作を行います。肩がすくみ肩が上がらないよう注意します。
この段階で身につけること
支持機能(肘での荷重)と運動機能(頸部のコントロール)を分離させる、この段階特有の課題です。
Fundamental Level(回転動作への発展):ローリングから支持動作へ
非荷重姿勢での安定性を獲得したら、次は体幹を安定させながら回旋する寝返り動作や、四肢で身体を支える動作へと進みます。
Upper Rolling(ローリング・寝返り動作)
乳児が寝返りを獲得する発達過程を応用し、体幹を使って寝返り動作を行うエクササイズです。
目的
体幹を安定させながら、胸郭と骨盤を分離して回旋させるコントロールを高めます。
エクササイズ実施上のポイント
腕や脚の反動に頼らず、胸郭や骨盤から動きを始め、体幹を使ってゆっくりと寝返ります。
実施上の注意点
腕や脚の勢いで一気に寝返っていないか、胸郭と骨盤がそれぞれコントロールされながら回旋しているかを確認します。
DNS Side Plank(DNSサイドプランク)
仰臥位からのローリングの流れの中で、身体を支持する姿勢(サイドプランク様の姿勢)へと発展させるエクササイズです。
目的
体幹を回旋させる「動き」と、側臥位で身体を支える「安定性」を組み合わせてコントロールすることを目的とします。
動作のポイント
寝返りの動きから、途中で動作を止めることなく、側臥位で身体を支える姿勢へ滑らかに移行します。
この段階で身につけること
身体を動かすだけでなく、動きの中から安定した姿勢へ移行するコントロールを身につけ、次のTransitional Level(移行レベル)につなげます。
Transitional Level(移行レベル):非荷重位から荷重位へ移行する
四つ這いや片膝立ちなど、身体を支えながら徐々に荷重を加えていく段階です。非荷重位で獲得した体幹の安定性を保ちながら、姿勢や動きをコントロールすることを目的とします。
Half Kneeling Lift / Cable(片膝立ちでのケーブルリフト)
片膝立ち姿勢を保ちながら、ケーブルを斜め下から上へ引き上げるエクササイズです。
目的
左右非対称な姿勢で体幹を安定させながら、上肢を対角線方向へ動かすコントロールを高めます。
エクササイズ実施上のポイント
ケーブルを引き上げる際に、体幹や骨盤が過度に回旋したり、左右に傾いたりしないようにします。下肢で身体を支えながら、安定した姿勢を保つことがポイントです。
この段階で身につけること
支持基底面が狭い片膝立ちで姿勢を安定させながら上肢を動かすことで、立位でのより複雑な動作につながる身体のコントロールを高めていきます。
Functional Level(機能的レベル):立位での統合
最終的に、立位・片脚支持といった、支持基底面が最も狭く、重心も最も高い姿勢へと進みます。
Single Leg RDL Reload(片脚立位でのデッドリフト)
片脚で身体を支えながら、ルーマニアンデッドリフトの動きを行うエクササイズです。
目的
片脚でバランスを保ちながら、股関節の動きと体幹・下肢の安定性を協調させることを目的とします。
動作のポイント
支持脚で床を押しながら股関節を中心に身体を倒します。骨盤の水平を保ち、体幹が過度に側屈・回旋しないようコントロールします。
この段階で身につけること
支持基底面の狭い片脚立位で、これまで獲得してきた体幹の安定性や股関節のコントロールを統合し、より機能的な立位動作へつなげます。
レベル | 代表的な姿勢 | 種目例 | 目的とねらい |
Fundamental(非荷重・基礎) | 仰臥位・腹臥位 | 3-Month Supine Breathing/Prone Chin-tuck | 呼吸と体幹の協調、支持と分離運動の獲得 |
Fundamental(回転) | ローリング | Upper Rolling/DNS Side Plank | 脊柱の分節的可動性、回旋と支持の両立 |
Transitional(移行) | 片膝立ち | Half Kneeling Lift / Cable | 非対称支持基底面での体幹安定性、対角線パターン |
Functional(機能的) | 立位・片脚支持 | Single Leg RDL Reload | 股関節・体幹・下肢の統合、バランス |
ここで紹介したプログレッションは、エクササイズを組み立てる際の一つの参考例です。
神経発達プロセス(NDS)をもとに、どのような動きや身体のコントロールを身につけたいのかという目的から種目を選び、段階的に進めていく考え方として活用できます。
まとめ
今回は、神経発達プロセス(NDS)とDNSの考え方をもとに、エクササイズをFundamental Level(基礎)→ Transitional Level(移行)→ Functional Level(機能)の3段階に分け、徐々に難易度を高めていくプログレッションを紹介しました。
エクササイズの難易度は、負荷量だけでなく、支持基底面の広さ・重心の高さ・四肢の自由度といった要素からも段階的に調整できます。
今回紹介したプログレッションは、すべての対象者に当てはまる決まった順序ではなく、エクササイズを組み立てる際の一つの参考例です。
今回紹介した考え方も一つの参考にしながら、目の前の対象者に合わせたエクササイズの選択やプログレッションに活かしてみてください。
参考文献
Frank, C., Kobesova, A., & Kolar, P. (2013). Dynamic neuromuscular stabilization & sports rehabilitation. International Journal of Sports Physical Therapy, 8(1), 62–73.
Kaushik, M., & Ahmad, I. (2024). Bridging dynamic neuromuscular stabilization synergism with movement control impairment related non-specific low back pain: Scoping review. Journal of Musculoskeletal & Neuronal Interactions, 24(4), 420–432.





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