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機能評価とは?姿勢と動作の評価から痛みの原因を考える基本を解説

  • 12 時間前
  • 読了時間: 8分

はじめに


リハビリや運動指導の現場では、画像所見や医学的診断だけでは症状を十分に説明できないケースに数多く遭遇します。


医学的診断によって「どの組織に問題があるのか」は把握できても、「なぜその組織に負荷がかかり続けているのか」までは分からないことも少なくありません。


そこで重要になるのが、姿勢や動作の評価を通して、症状の背景にある身体の使い方を捉える「機能評価」という考え方です。


機能評価とは、筋力や関節可動域、姿勢、動作パターン、運動制御などを評価し、身体がどのように機能しているのかを捉えるための評価です。


本記事では、組織レベルの評価だけでは見えない問題を、機能面からどのように評価し、リハビリや運動指導に活かしていくのかを解説します。


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画像所見だけでは痛みの原因を説明できない理由


機能評価の必要性を理解するうえで、まず知っておきたいのが、「画像所見と症状は必ずしも一致しない」という事実です。


脊椎領域を対象としたシステマティックレビューでは、椎間板変性や椎間板膨隆などの変性所見は、痛みのない人にも高い割合で認められることが報告されています[1]。


さらに、これらの変性所見は年齢とともに増加し、60歳以上では椎間板変性やMRI信号の変化が約9割の人に認められることが明らかになっています。


画像上の変性所見は症状のない人にも多くみられ加齢とともに増加するため、画像所見と実際の症状は必ずしも一致しません。痛みの原因判断においては画像所見のみに捉われず、姿勢や動作などの機能面も含めた総合的な評価が重要です。提供元はフィジオプラス。


このように、画像上の異常と症状は必ずしも一致するわけではありませんが、これは画像診断や医学的診断の重要性を否定するものではありません。


組織の状態を把握することは、病態を理解し、治療方針を決定するうえで欠かせない情報です。


しかし、画像所見だけでは痛みの原因を十分に説明できないことがあります。


症状を理解するためには、「どの組織に問題があるのか」だけでなく、「なぜその組織に負荷がかかり続けているのか」という視点が欠かせません。


その背景を明らかにするために重要となるのが機能評価です。



機能評価とは?姿勢や動作を評価する理由


姿勢や動作から身体の機能を捉える考え方には、いくつかの代表的なアプローチがあります。


その一つが、生体力学的な観点から動作と組織への負荷を捉えるSahrmannの運動系機能障害システム(Movement System Impairment:MSI)です。


そして、もう一つが、神経学的な観点から筋機能や運動制御を捉えるJandaの感覚運動システム(Sensorimotor System)です。


それぞれ着目するポイントは異なりますが、どちらも姿勢や動作から症状の背景にある問題を捉えるうえで重要な考え方です。


Sahrmannの「運動系機能障害システム(MSI)」とJandaの「感覚運動システム」における評価アプローチを解説しています。運動系機能障害システムでは、日常の姿勢や反復動作による偏りと特定部位への負荷集中に着目して評価を行います。一方、感覚運動システムでは、感覚・神経・筋の相互作用に着目し、筋緊張や活動バランス、姿勢・動作の調整状態を評価します。提供元はフィジオプラス。

運動系機能障害システム

(Sahrmann)

感覚運動システム

(Janda)

主な視点

生体力学・動作パターン

神経系・筋機能

基本的な考え方

姿勢や反復動作の偏りによって、特定の組織に負荷が集中する

感覚系・中枢神経系・運動系の相互作用によって、筋機能や動作に変化が生じる

評価するポイント

アライメント、反復動作、動作方向、組織への負荷

筋の緊張・抑制、筋活動のバランス、姿勢・動作パターン


ここからは、この2つのアプローチについて詳しく見ていきます。



  1. 運動系機能障害システム(Sahrmannアプローチ:MSI)


機能評価を理解するうえで代表的な考え方の一つが、Sahrmannらによる運動系機能障害システム(Movement System Impairment:MSI)の考え方です。


このモデルでは、日常生活におけるアライメントの偏りや、特定方向への反復動作が繰り返されることで、特定の組織に負荷が集中し、時間の経過とともに症状につながる可能性があると考えます[2]。


つまり、症状がある部位だけを見るのではなく、普段どのような姿勢をとり、どのような動作を繰り返しているのかまで評価することが重要になります。


例えば、腰痛があるから腰だけを評価するのではなく、立つ、歩く、しゃがむ、腕を挙げるといった動作の中で、腰椎がどのように動き、どこに負荷が集中しているのかを評価します。



  1. 感覚運動システム(Jandaアプローチ)


もう一つ、機能評価に影響を与えてきたのが、Vladimir Jandaによる感覚運動システム(sensorimotor system)の考え方です。


Jandaは、身体の動きを筋力や関節可動域だけで捉えるのではなく、感覚系・中枢神経系・運動系が相互に関係するものとして捉えました[3]。


その中で、姿勢保持に関わる筋は短縮や過緊張に、動作に関わる筋は抑制や筋力低下に傾きやすいという特徴を示し、個々の筋だけではなく、筋活動のバランスや姿勢・動作パターン全体を評価することを重視しています。



機能評価で見るべき3つの要素


私たちの身体の動きは、一つの筋や関節だけで生み出されているわけではありません。


運動システムは、大きく「筋系」「関節系」「神経系」の3つの要素によって構成されています。


2つのアプローチに共通する視点として、身体を部分ではなく一つの運動システムとして捉える評価アプローチを解説しています。筋系・関節系・神経系の3つが互いに影響し合う相互関係を示し、姿勢や動作の背景にある問題を評価する重要性を伝えています。提供元はフィジオプラス。

筋系

筋・腱・筋膜など、身体を動かすための力を生み出し、伝える役割を担います。

関節系

関節の構造や可動性など、身体がどの方向に、どの程度動けるのかに関わります。

神経系

感覚情報をもとに、運動を計画・制御し、身体の動きを調整する役割を担います。


これらはそれぞれ独立して働くのではなく、互いに影響し合うことで一つの動作を生み出しています。


そのため、姿勢や動作に問題がみられた場合も、単に筋力が弱い、関節が硬いと判断するのではなく、筋系・関節系・神経系のどこに問題があり、それらがどのように影響し合っているのかを考えることが重要になります。


このように身体を一つのシステムとして捉え、症状や動作の背景にある問題を明らかにしていくことが、機能評価の基本的な考え方です。



姿勢の変化はどのように機能障害につながるのか?


ここまで説明してきた内容を、実際の姿勢を例に考えてみましょう。


例えば、デスクワークなどで胸椎が後弯した姿勢を長時間とり続けているケースです。


デスクワークなどで胸椎が後弯した持続的な不良姿勢から痛みや機能障害が発生するプロセスの例を解説しています。不良姿勢が続くことで筋の長さや活動バランスが変化し、他部位での代償動作を経て特定部位へ負荷が集中することで、痛みや機能障害の発生に至る一連の流れを示しています。提供元はフィジオプラス。

このような姿勢では、肩甲骨周囲の筋は伸張された状態が続く一方、胸部前面の筋は短縮した状態になりやすく、筋の長さや活動のバランスに変化が生じる可能性があります。


これは、Jandaが示した筋機能の考え方とも共通する部分があります。


さらに、同じ姿勢を長時間繰り返すことで胸椎の動きが制限されると、必要な動きを他の部位で補うことがあります。


例えば、胸椎が十分に伸展できない場合、頭部を正面に保つために頚椎で動きを代償するなど、別の関節に負荷が集中する可能性があります。


これは、Sahrmannのモデルにおける持続的なアライメントや反復動作が身体機能に影響するという考え方にもつながります。


このように、症状が現れている部位と、その背景にある問題が必ずしも同じ場所にあるとは限りません。


頚椎に症状がある場合でも、首だけを見るのではなく、胸椎の可動性や肩甲骨の動き、日常的な姿勢や動作まで含めて評価することで、症状につながっている要因をより広い視点から捉えることができます。


股関節の機能は膝や足部にどう影響するのか?


もう一つ、ランニング中に膝の外側に痛みが出るケースについて考えてみましょう。


股関節外転筋である中殿筋や小殿筋は、歩行や片脚立位などにおいて、骨盤や下肢を安定させる重要な役割を担っています。


そのため、股関節周囲筋の機能が低下すると、動作中に骨盤や大腿部を十分にコントロールできず、膝や足部を含めた下肢のアライメントに影響する可能性があります。


ランニング中に膝の外側へ痛みが生じるプロセスの例を解説しています。股関節周囲筋の機能低下が動作中の下肢アライメントに影響を及ぼし、膝や足部への負担が増加することで、最終的に痛みや機能障害の発生につながる一連の流れを示しています。提供元はフィジオプラス。

実際に、ランナーを対象としたシステマティックレビューでは、股関節周囲筋の筋力と下肢傷害との関連が検討されています。


腸脛靱帯炎では股関節外転筋力との関連が示されている一方、膝蓋大腿関節痛やシンスプリントなどでは、研究によって結果が一致していません[4]。


そのため、「股関節周囲筋が弱いから膝が痛くなる」と単純に考えることはできません。


重要なのは、膝や足部に症状がある場合でも、その部位だけを見るのではなく、股関節の筋力や可動性、骨盤の安定性、動作中の下肢アライメントなども含めて評価することです。


まとめ


機能評価は、画像診断や医学的診断に代わるものではなく、症状の背景にある身体の使い方を捉えるための視点です。


症状がある部位だけを見るのではなく、姿勢や動作、筋力、関節可動域、運動制御などを評価することで、「なぜその部位に負荷がかかっているのか」を考えることができます。


一方で、「姿勢が悪いから痛い」「この筋が弱いから症状が出る」と、一つの所見だけで原因を決めつけることには注意が必要です。


画像所見や病態、症状、姿勢・動作など複数の情報を組み合わせ、その人の身体を一つの運動システムとして捉えることが、機能評価をリハビリや運動指導に活かすうえで重要になります。


参考文献


  1. Brinjikji, W., Luetmer, P. H., Comstock, B., Bresnahan, B. W., Chen, L. E., Deyo, R. A., Halabi, S., Turner, J. A., Avins, A. L., James, K., Wald, J. T., Kallmes, D. F., & Jarvik, J. G. (2015). Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. American Journal of Neuroradiology, 36(4), 811–816.

  2. Sahrmann, S., Azevedo, D. C., & Van Dillen, L. (2017). Diagnosis and treatment of movement system impairment syndromes. Brazilian Journal of Physical Therapy, 21(6), 391–399.

  3. Page, P., Frank, C. C., & Lardner, R. (2010). Assessment and treatment of muscle imbalance: The Janda approach. Human Kinetics.

  4. Mucha, M. D., Caldwell, W., Schlueter, E. L., Walters, C., & Hassen, A. (2017). Hip abductor strength and lower extremity running related injury in distance runners: A systematic review. Journal of Science and Medicine in Sport, 20(4), 349–355.

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