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肩甲上腕リズムとは?肩甲骨の動きと評価で押さえたいポイント

3 時間前
読了時間: 6分

はじめに


腕を頭の上まで挙げるとき、肩甲上腕関節だけでなく、肩甲骨や鎖骨も協調して動いています。


上腕骨と肩甲骨の協調した動きを肩甲上腕リズム(Scapulohumeral Rhythm)と呼びます。


肩甲上腕リズムは、肩関節の運動機能を評価するうえで重要な要素の一つです。


本記事では、肩甲上腕リズムの基本的な仕組みや腕の挙上に伴う肩甲骨の動など、リハビリや運動指導に役立つ知識をわかりやすく解説します。



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肩甲上腕リズムとは?


肩甲上腕リズム(Scapulohumeral Rhythm)とは、腕を挙げる際に生じる、肩甲上腕関節と肩甲骨の協調した動きを指します[1]。


一般的に、肩甲上腕関節の挙上と肩甲骨の上方回旋は「2:1」の比率で生じると説明されています。




例えば、腕を180°挙げる場合、肩甲上腕関節が約120°挙上し、肩甲骨が約60°上方回旋するとされています[2,3,4]。


つまり、腕を頭上まで挙げる動きは、肩甲上腕関節だけでなく、肩甲骨や鎖骨が連動することで成り立っています。



肩甲上腕リズムにおける肩甲骨と上腕骨の関係性


肩甲上腕リズムは、腕を挙げる角度によって変化します。


一般的に、挙上初期は肩甲上腕関節の運動が中心となり、腕を高く挙げるにつれて肩甲骨の上方回旋が大きくなる傾向があります[5]。


肩甲上腕リズムの解説図。肩甲骨と腕の骨の3段階図に、外転0°・90°・180°、30°/60°/120°の角度矢印とPhysioplus表記。

肩関節の挙上角度

肩甲骨の動きの特徴

0〜30°

肩甲上腕関節の運動が中心となり、肩甲骨の動きは比較的小さい。

30〜90°

肩甲骨の上方回旋が徐々に大きくなる。

90°以降

上方回旋に加え、後傾や外旋などの動きも重要になる。


肩甲骨は挙上初期からわずかに動き始め、腕を下ろす際には挙上時と異なる動きを示すため、肩甲上腕リズムの評価では挙上時と下降時の両方を観察することが重要になります。



腕の挙上に伴う肩甲骨の動き


肩甲骨の動きを示す解剖図。鎖骨、上腕骨、肩甲骨、肋骨、脊柱を前後から示し、回旋をオレンジ矢印で解説。PhysioPlus表記。

腕を挙げる際、肩甲骨は単に上方へ回旋するだけでなく、次の3つの運動を組み合わせて動いています[6]。

肩甲骨の動き

動きの特徴

上方回旋

肩甲骨の関節窩が上を向くように回旋する。

後傾

肩甲骨の上部が後方へ傾き、下角が前方へ移動する。

外旋

肩甲骨の外側が後方へ回旋する。

これらの動きに加え、鎖骨の挙上や後方回旋、上腕骨の外旋などが協調することで、腕を頭上までスムーズに挙げることができます。


肩甲上腕リズムに関わる筋の働き


腕をスムーズに挙げるためには、肩甲上腕関節と肩甲骨を動かす筋が協調して働く必要があります。


肩甲上腕リズムの解説図。骨格に赤い筋肉が重ねられ、僧帽筋・三角筋・前鋸筋・棘上筋・棘下筋などの働きを矢印で示す。

肩甲上腕リズムに関わる主な筋とその役割を以下にまとめます。

肩甲上腕リズムに関わる主な筋肉

役割

三角筋

上腕骨を挙上する。

ローテーターカフ(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)

上腕骨頭を関節窩に安定させ、挙上を補助する。

僧帽筋(上部・下部)、前鋸筋

肩甲骨を上方回旋させ、挙上を支える。

肩甲挙筋、菱形筋

肩甲骨の下方回旋に関与する。

特に、三角筋とローテーターカフの協調運動は、肩甲上腕関節の安定性を保ちながら腕を挙げるために重要です。


三角筋が上腕骨を挙上する際、ローテーターカフは上腕骨頭を関節窩に安定させ、過剰な上方移動を抑える働きを担います[4]。


一方、僧帽筋や前鋸筋は肩甲骨の上方回旋を促し、上腕骨の動きに合わせて肩甲骨の位置を調整します。



肩甲上腕リズムの異常と関連する要因


肩甲上腕リズムの変化は、腱板障害や肩峰下痛症候群、肩関節不安定症、凍結肩など、さまざまな肩の障害との関連が報告されています[6]。


特に、肩甲骨の位置や動きに異常がみられる状態は肩甲骨運動異常(Scapular Dyskinesis:肩甲骨ジスキネジア)と呼ばれ、肩関節の運動機能を評価するうえで重要な観察ポイントとなります[7]。


肩甲上腕リズムにみられる代表的な問題


肩の痛みや機能障害がある人では、以下のような肩甲骨の動きの変化が報告されています[7,8,9]。

肩甲骨の動きのエラー

動きの特徴

上方回旋の減少

腕を挙げる際に肩甲骨の上方回旋が少ない

後傾の減少

腕を高く挙げても肩甲骨が十分に後傾しない

肩甲骨の浮き上がり

肩甲骨の内側縁や下角が胸郭から浮き上がる

過剰な肩のすくみ

腕の挙上に伴い、肩甲骨が過剰に挙上する

これらの変化は、肩甲骨の運動制御や周囲の筋機能など、さまざまな要因によって生じる可能性があります。


肩甲上腕リズムに影響する要因


肩甲骨の動きには、筋の働きだけでなく、柔軟性や姿勢、神経機能なども関係しています[6,8,10]。

関連する要因

具体的な特徴

筋機能

前鋸筋の活動低下、僧帽筋の活動バランスの変化

柔軟性

小胸筋の短縮、肩関節後方組織の柔軟性低下

姿勢

胸椎後弯の増大、円背姿勢

神経機能

長胸神経や副神経の障害


例えば、前鋸筋の活動低下や小胸筋の短縮、胸椎後弯の増大などは、肩甲骨の運動パターンの変化と関連することが報告されています[6,8]。


まとめ


肩甲上腕リズムとは、腕の挙上に伴う肩甲上腕関節と肩甲骨の協調した動きを指します。


一般的に「2:1」の比率で説明されますが、実際には挙上角度や運動方向によって変化します。


また、肩甲骨の上方回旋・後傾・外旋には、僧帽筋や前鋸筋などの筋機能に加え、柔軟性や姿勢なども関係しています。


肩甲上腕リズムの評価では、肩甲骨の動きだけで異常を判断せず、関節可動域や筋機能、痛みとの関連を総合的に捉えることが重要です。


リハビリや運動指導では、これらの特徴を理解し、個々の状態に応じた評価や運動療法につなげていきましょう。


参考文献


  1. Muscle & Motion. (n.d.). Scapulohumeral rhythm shoulder abduction with muscular analysis [Video]. YouTube.

  2. Inman, V. T., Saunders, J. B., & Abbott, L. C. (1996). Observations of the function of the shoulder joint. 1944. Clinical Orthopaedics and Related Research, (330), 3–12.

  3. McClure, P. W., Michener, L. A., Sennett, B. J., & Karduna, A. R. (2001). Direct 3-dimensional measurement of scapular kinematics during dynamic movements in vivo. Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 10(3), 269–277.

  4. Cailliet, R. (2000). 『図説 運動器の機能解剖』(荻島秀男, 訳). 医歯薬出版. 第4章 肩の機能解剖, pp. 105–133.

  5. Ludewig, P. M., Phadke, V., Braman, J. P., Hassett, D. R., Cieminski, C. J., & LaPrade, R. F. (2009). Motion of the shoulder complex during multiplanar humeral elevation. Journal of Bone and Joint Surgery. American Volume, 91(2), 378–389.

  6. Ludewig, P. M., & Reynolds, J. F. (2009). The association of scapular kinematics and glenohumeral joint pathologies. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 39(2), 90–104.

  7. Kibler, W. B., Ludewig, P. M., McClure, P. W., Michener, L. A., Bak, K., & Sciascia, A. D. (2013). Clinical implications of scapular dyskinesis in shoulder injury: The 2013 consensus statement from the ‘Scapular Summit’. British Journal of Sports Medicine, 47(14), 877–885.

  8. Ludewig, P. M., & Cook, T. M. (2000). Alterations in shoulder kinematics and associated muscle activity in people with symptoms of shoulder impingement. Physical Therapy, 80(3), 276–291.

  9. Lawrence, R. L., Braman, J. P., LaPrade, R. F., & Ludewig, P. M. (2014). Comparison of 3-dimensional shoulder complex kinematics in individuals with and without shoulder pain, part 1: Sternoclavicular, acromioclavicular, and scapulothoracic joints. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 44(9), 636–645.

  10. Kibler, W. B., Ludewig, P. M., McClure, P. W., Michener, L. A., Bak, K., & Sciascia, A. D. (2013). Clinical implications of scapular dyskinesis in shoulder injury: The 2013 consensus statement from the ‘Scapular Summit’. British Journal of Sports Medicine, 47(14), 877–885.

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