「マッサージガンは本当に効くのか?」科学的根拠から見るパフォーマンスと回復への効果
- フィジオプラス

- 2025年10月25日
- 読了時間: 7分
キーポイント:この研究レビューから見えてきたこと
短期的な関節可動域(ROM)と柔軟性の向上には有効である。
筋力、爆発的パワー、俊敏性といったパフォーマンスの向上には効果がなく、むしろ低下させる可能性がある。
運動後の疲労回復(筋硬直の軽減、ROM改善など)に対しては、短期的に有効である。
使用目的(回復か柔軟性向上か)によって、推奨される周波数や使用時間が異なるため、使い分けが重要である。
背景と目的
近年、マッサージガンは理学療法の臨床現場やスポーツの現場で急速に普及しています。その手軽さから多くの専門家やアスリートに利用されていますが、人気が先行する一方で、その具体的な使用方法や効果に関する科学的根拠は依然として乏しいのが現状です。多くの臨床家が、同僚との情報交換や自身の経験則に基づいて使用しており、最適な臨床実践とは言えない状況が懸念されていました。
このような背景から、Ferreiraらが2023年に発表したシステマティックレビューは、「健康な人およびそうでない人におけるマッサージガンの効果を体系的にレビューすること」を目的として実施されました。本記事では、この研究の結果を基に、マッサージガンの科学的エビデンスを解説します。
方法
この研究は、複数の主要な医学・スポーツ科学データベース(PubMed, Scopus, SPORTDiscusなど)から関連研究を網羅的に検索した、信頼性の高いシステマティックレビューです。
検索の結果、設定された適格基準を満たした11件の実験研究が最終的な分析対象となりました。レビューに含まれた研究の主な評価項目は、運動前の使用を想定した「パフォーマンス関連」の指標と、運動後の使用を想定した「回復関連」の指標に大別されていました。
結果
今回のシステマティックレビューで明らかになった結果を、「パフォーマンスへの影響」と「回復への影響」の2つの側面に分けて具体的に解説します。
1.パフォーマンスへの影響
柔軟性は向上するが、筋力は向上しない
複数の研究で、マッサージガンの使用が短期的なROMと柔軟性の向上に有効であることが確認されましたある研究では、ふくらはぎの筋肉に5分間使用したところ、足関節の背屈ROMが平均5.4度増加しました(Konrad et al.)。
別の研究では、股関節屈筋(腸腰筋)やハムストリングスの柔軟性が有意に改善したことが報告されています(Alvarado et al.)。
筋力や瞬発力には効果が乏しく、
パフォーマンスを低下させる可能性も
一方で、筋力や爆発的なパワーが求められるパフォーマンス指標に対しては、効果がない、あるいはむしろ悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。
垂直跳びなどの瞬発的なパフォーマンスは向上しませんでした。
ある研究では、アキレス腱に1分間使用した後、ジャンプ高がわずかに低下(∆ = -3.1%)したことが指摘されています(Szymczyk et al.)。
この理由として、爆発的なパワー発揮に重要な筋腱のスティフネス(硬さ)が低下した可能性が挙げられています。腱のスティフネスは、エネルギーを蓄積・放出する「バネ」のような役割を果たします。マッサージガンによってこの「バネ」が緩むと、爆発的な力を生み出す能力が減少し、パフォーマンス低下につながると考えられます。
結論として、筋力や瞬発力が求められる運動の直前にウォームアップ目的でマッサージガンを使用することは推奨されません。
2.回復への影響
短期的な疲労回復には有効、長期的な回復効果は限定的
疲労困憊させるような激しい運動の後にマッサージガンを使用することは、回復を促進する上で短期的に有効であることが示されました。
ある研究では、筋肉を疲労させた24時間後にマッサージガンを使用したところ、筋の収縮時間や硬さの指標(半径方向変位)に改善が見られました(García-Sillero et al.)。疲労した筋においてはこのスティフネスの低下が回復を促す一方で、前述の通りパフォーマンス発揮前にはマイナスに働くため、使用する文脈が重要です。
別の研究では、疲労した肩の筋肉に5分間使用したところ、肩の内旋ROMが2.3度、筋力が1.1ポンド向上しました(Trainer et al.)。
本レビューでは、これらの回復効果は特に低い周波数(40Hz未満)を用いた場合に、より一貫して見られることが指摘されています。
疲労感や乳酸値への限定的な効果
主観的な疲労度(RPE)や血中乳酸濃度に関しては、受動的な休息と比較して有意な差は見られませんでした(Alonso-Calvete et al.)。
効果の持続性
これらの回復に関する効果は、主に介入直後から24時間後までの短期的なものであり、48時間後以降の長期的な効果については、本レビューでは明らかにされていません。
今後の課題
このシステマティックレビューの結果を解釈する際には、以下の限界点を考慮する必要があります。
質の課題:分析対象となった研究の多くが「中程度のリスク・オブ・バイアス(結果の偏りの危険性が中程度)」と評価されており、結果の信頼性には一定の限界があります。
研究数の少なさ:分析対象となった研究が11件と少数であり、結論を一般化するにはさらなる研究が必要です。
短期的な評価: ほとんどの研究が介入直後の短期的な効果しか検証しておらず、長期的な影響は不明です。
研究から見えてくる、現場での活かし方とヒント
このレビューから得られる最も価値ある知見は、マッサージガンの効果を最大化し、リスクを最小化するための具体的な使用指針です。目的によって最適な設定が大きく異なるため、以下のガイドラインは臨床判断の根幹となります。
推奨される使用法(目的別のガイドライン) |
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避けるべき使用法 |
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安全に使用するための禁忌と注意点
マッサージガンは安全なツールですが、誤った使用はリスクを伴います。以下の禁忌と注意点を必ず守ってください。
禁忌(使用してはいけない部位や状態) |
皮膚の状態: 開放創、治癒過程にある瘢痕、打撲傷、日焼け、発疹、皮膚感染症がある部位
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注意点(使用を避けるべき部位や方法) |
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このレビューから得られる最も価値ある知見は、マッサージガンの効果を最大化し、リスクを最小化するための具体的な使用指針です。目的によって最適な設定が大きく異なるため、以下のガイドラインは臨床判断の根幹となります。
まとめ
最後に、現場でマッサージガンを活用する上で最も重要点を以下の3つにまとめます。
マッサージガンは、パフォーマンス向上目的のウォームアップには不向きです
運動後の回復や、柔軟性向上のツールとしては短期的に有効的であることが示されています。
安全な使用のため、目的別の設定(周波数・時間)と禁忌事項の理解が不可欠です。





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