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SOAPの書き方|押さえておくべきカルテ記録の基本とポイント

  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

はじめに


臨床や運動指導の現場では、目の前のクライアントや患者の状態をどのように解釈し、次のプランへつなげるかが重要です。


このプロセスを構造化し、他者や他職種にも分かりやすく共有するための手法が、SOAPと呼ばれる記録形式です。


SOAPは、1960年代にLawrence Weed博士が提唱した問題志向型システム(Problem-Oriented System:POS)の中核をなすフレームワークです[1]。


現在では医療分野にとどまらず、アスレティックリハビリテーションやパーソナルトレーニングの現場においても、科学的根拠に基づいたアプローチを支える基本的な枠組みとして広く用いられています。


本記事では、SOAPの各項目の定義を整理するとともに、現場で生じやすい「情報の混在」を防ぐための書き方のポイントやカルテの書き方の具体例について解説します。



SOAPの基本構成と4つの要素


SOAPは、Subjective(主観的情報)、Objective(客観的情報)、Assessment(評価・解釈)、Plan(計画)の頭文字を取ったものです。


SOAPの基本構成フロー図。主観的所見、客観的所見、評価、計画の4要素を示し、それぞれの間に矢印が描かれています。


記録内容

記録時のポイント

Subjective(主観的情報)

主訴、症状の経過(発症機転)、過去の病歴、現在の痛みや不調の質、日常生活での困りごと、そして本人の目標(Goal)が含まれます。

トレーナーやセラピストが「こうだろう」と推測した内容は含めず、あくまで本人が発した言葉や主観的な感覚(例:VASによる痛みの数値)を記載します。

Objective(客観的情報

視診、触診、関節可動域(ROM)、筋力テスト(MMT)、歩行分析、動作テスト、徒手検査の結果などです。

「膝の伸展が制限されている」といった抽象的な表現ではなく、「ROM:右膝伸展 -10°(End feel:Hard)」のように、誰が見ても同じ状態が想起できるよう数値化・具体化して記録します。

Assessment(評価・解釈)

症状の原因についての仮説、機能障害と動作制限の関連性、前回セッションからの変化(改善・悪化の要因分析)などを記載します。

単に「筋力低下がある」と記載するのではなく、「S(階段での膝崩れ)とO(大腿四頭筋MMT3)より、膝関節支持性の低下が歩行異常の主要因と考えられる」といったように、S・Oとの論理的整合性を持たせることが重要です。

Plan(計画)

具体的な運動メニュー、負荷設定、頻度、教育・指導内容、紹介の必要性などが含まれます。

「筋力強化を行う」といった曖昧な記述ではなく、「スクワット:20回×3セット、週3回実施。次回、疼痛の増悪がないか確認する」といったように、具体的かつ修正可能な計画を立てます。


このように、Subjective(主観的情報)はクライアント自身の言葉で語られる情報であり、Objective(客観的情報)は身体検査や測定によって得られた再現性のある事実です[2]。


Assessment(評価・解釈)は、SとOの情報を統合し、専門家としての解釈を加えるプロセスであり、SOAPの中でも最も重要な臨床推論の核心となる部分です[3]。


また、SとOは一度記録して終わりではなく、評価と介入を繰り返す中で更新されていきます。新たな介入によってクライアントの主観的な変化(新しいS)が生まれ、それを再度客観的に評価(O)することで、より適切なAssessmentへとつなげていくことが重要です。


SOAPの基本構成を示す図。左からS主観的所見、O客観的所見、A評価、P計画が矢印で順番に連なっている。背景は白。習慣的な分析手法を説明するための内容が黒の円に白い文字で記載されている。

Plan(計画)は、Assessmentに基づいて立てられる、次回の指導内容や今後の戦略を示します。



カルテの書き方|SOAPの考え方と記載のポイント


ここからは、臨床や運動指導の現場で遭遇する機会の多い肩関節痛や腰痛を例に、実際のSOAPのフレームワークに沿った記載例を紹介します。


なお、本記事の目的は評価項目を網羅的に示すことではなく、「どのように整理して記載するか」という考え方を理解することにあります。


そのため、評価項目の網羅に着目するのではなく、「情報をどのように整理し、記載へ落とし込むか」という視点で捉えていただければ幸いです。



ケース1:「腕を挙げると肩が痛む」という訴えを持つクライアント(40代・デスクワーク)の例


S

「洗濯物を干す時に肩の外側が痛む(VAS 6/10)」「夜寝返りを打つと疼くことがある」「2週間前から徐々に悪化した」

O

肩関節屈曲140°(終末期痛あり)。Scapular Dyskinesis(肩甲骨の挙上・上方回旋不足)を認める。Neerテスト陽性。MMT:棘下筋 4、前鋸筋 3+。

A

肩甲骨の運動異常(Dyskinesis)および回旋筋腱板の出力低下により、挙上時に肩峰下インピンジメントが生じていると推察される。安静時痛がないことから、組織の器質的損傷よりも機能不全による力学的ストレスが主因。

P

肩甲骨周囲筋(前鋸筋・僧帽筋下部)の活性化エクササイズを実施。腱板の等尺性収縮トレーニング(10秒保持×5回)を指導。日常生活では患側を下にした側臥位を避けるよう助言。



ケース2:「デスクワーク中に腰が重くなり、前屈みになると痛む」と訴えるクライアント(35代・事務職)の例


S

「デスクワークが1時間を超えると腰全体が重だるくなる(NRS 4/10)」「靴下を履く動作で鋭い痛み(NRS 7/10)が走る」「下肢の痺れや脱力感はない」。

O

腰椎屈曲 45°(指床間距離 20cm)で腰仙部に疼痛誘発。SLR 80°(陰性)。股関節屈曲可動域:右 95°/ 左 100°。Hip-Spine Syndrome(股関節可動域制限を代償する腰椎過屈曲)を認める。

A

股関節の屈曲可動域制限により、前屈動作時に腰椎へ過度な屈曲ストレス(Mechanical Stress)が集中している。神経学的所見が陰性であることから、椎間板や神経根の器質的損傷よりも、運動制御不全(Movement Coordination Impairment)に伴う疼痛と推察される。

P

股関節後方組織(大臀筋・ハムストリングス)のストレッチおよびモビリティ向上。骨盤の前後傾を分離して動かすCat & Dogの指導。デスクワーク中の座り方(ランバーサポートの活用)と、30分毎の離席をアドバイス。


なお、本記載例は実際の症例ではなく、臨床でよく見られるケースをもとに作成した架空の内容です。症例情報や個人が特定される可能性のある内容を扱う際は、SNSや生成AIへの入力も含め、個人情報の取り扱いには十分注意し、適切に管理することを心がけましょう。

SOAPを現場で使いこなすためのポイント


リハビリテーションや運動指導において、SOAPの記載の精度を高めるためには、以下の3点を意識することが重要です。


SとOを混同しない


「患者やクライアントはやる気があるように見える」という表現は、トレーナーやセラピスト側による主観的な観察であり、厳密には「O」における視診や「A」での解釈に分類されるべき内容です。


SとOを混同すると、事実と解釈が曖昧になります。憶測を含んだ内容をSとして記載しないよう注意が必要です。


Assessmentで「なぜ」を考える


経験を重ねるほど、Assessmentの項目で自身の思考プロセスを振り返り、仮説が妥当であるかを検証することが重要になります。


Assessmentは単なる現状報告ではなく、「なぜ良くなったのか(あるいは停滞しているのか)」を分析する場です。SとOを繰り返し評価し、その精度を高めていくことで、より適切なAssessmentへとつなげていくことが重要です。


Planは「S・O・A」をもとに組み立てる


P(計画)だけが独立してしまっているケースは少なくありません。Planは必ずAssessmentから導き出されるべきであり、評価の結果に基づいて一貫性を持たせる必要があります。


例えば、問題は可動域ではなく安定性にあると判断された場合には、Planにも安定性向上のための具体的なアプローチが反映されていなければなりません。


それにもかかわらず、介入としてストレッチを選択してしまうと、これまでの評価プロセスとの整合性が失われてしまいます。


Planは単なる方針ではなく、「何を・どのように行うか」というhowの視点まで具体化することが重要です。これにより、評価から介入へのつながりが明確になります。



まとめ


SOAPは単なる記録の形式ではなく、臨床や運動指導における意思決定の質を高めるための思考フレームワークです。


SとOを適切に整理し、それらをもとにAssessmentで解釈を深め、Planへと一貫性をもってつなげることが重要です。


また、このプロセスを繰り返すことで、評価と介入の精度が高まり、より再現性のある指導へとつながります。


記録そのものを目的とするのではなく、「どのように考え、どのように次の一手を導くか」という視点でSOAPを活用していくことが求められます。



参考文献


コメント


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