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HBDテスト(踵臀部距離テスト)で何がわかる?大腿直筋と大腿筋膜張筋を鑑別する評価のポイント

  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

はじめに


HBD テスト(Heel-buttock distance test:踵臀部距離テスト)は、大腿前面の柔軟性を評価する代表的な検査として、臨床や運動指導の現場で広く用いられています。


しかし、「踵が臀部に着かない=大腿直筋が硬い」と判断してしまうのは早計です。


実際には、大腿筋膜張筋(TFL)の柔軟性低下が影響しているケースも少なくなく、制限因子を見誤るとアプローチの効果にも影響します。


本記事では、大腿直筋と大腿筋膜張筋の解剖学・運動学的な違いを整理しながら、股関節のポジションを利用して両者を鑑別するHBDテストの評価方法を解説します。



HBD (踵臀部距離)テストを正しく評価するポイント


HBD テスト(Heel-buttock distance test)は、対象者を腹臥位とし、検者が他動的に膝関節を最大屈曲させた際の踵から臀部までの距離(cm)を測定する評価法です。


HBDテストの説明図。ベッドでうつ伏せの患者の膝を曲げ、検査者がかかとを臀部へ近づけて距離を測定している。

もともとは、大腿直筋の柔軟性や痙縮を評価するEly's test(Duncan-Ely test)を、より客観的かつ定量的に評価する指標として用いられています[1]、[2]。


一方で、通常のHBD テスト(股関節中間位)だけでは、膝屈曲を制限している原因が大腿直筋なのか、大腿筋膜張筋(TFL)なのかを判別することは困難です。


そのため、HBDの延長という結果だけで制限因子を判断すると、評価やアプローチを誤る可能性があります。


そこで重要になるのが、股関節の肢位を変化させながら評価を行い、それぞれの筋の影響を鑑別するという考え方です。本記事では、その具体的な評価方法について解説します。



HBD (踵臀部距離) テストで鑑別する2つの筋肉


HBD テストの制限因子を正しく鑑別するためには、大腿直筋と大腿筋膜張筋の解剖学的がどのように働くのかを理解しておく必要があります[3]。



筋肉名

起始・停止

主な作用(股関節・膝関節)

大腿直筋 (Rectus Femoris)

起始:骨盤(下前腸骨棘)

停止: 脛骨粗面

股関節屈曲・膝関節伸展

大腿筋膜張筋 (Tensor Fasciae Latae:TFL)

起始:骨盤(上前腸骨棘外側)

停止: 腸脛靭帯を介して脛骨外側顆(Gerdy結節)

股関節屈曲・外転・内旋


大腿直筋と大腿筋膜張筋はいずれも股関節をまたぐ筋であり、股関節の肢位によって張力が変化します。


大腿直筋は股関節伸展位、大腿筋膜張筋は股関節内転位で伸張されるため、HBD テストでは股関節の肢位を変えることで、どちらの筋が膝屈曲の制限因子となっているかを鑑別できます。


HBDテストの評価方法4




実施手順

  1. 被験者を腹臥位(うつ伏せ)にします。

  2. 検者は被験者の股関節を中間位に保持し、骨盤が動かないように固定します。

  3. 膝関節をゆっくりと他動的に最大屈曲し、踵と臀部との最短距離(Heel-buttock distance:HBD)を測定します。

  4. 続いて、被験者の股関節を外転位に変更し、同様に骨盤を固定した状態で膝関節を最大屈曲させ、HBDを測定します。

  5. 中間位と外転位で測定したHBDを比較し、制限因子を評価します。


中間位と外転位のHBDを比較することで、大腿直筋と大腿筋膜張筋のどちらが膝屈曲の制限因子となっているかを鑑別します。

HBDテストの評価結果と解釈


HBDテストの解説図。ベッド上で施術者が仰向け患者の脚を持ち上げ、股関節中間位と外転位で大腿直筋・大腿筋膜張筋の柔軟性を評価する。

HBDテストの評価ポイントを示す図。施術者が仰向け患者の股関節を中間位・外転位で評価し、右に制限有無と筋タイトネスの説明。

股関節中間位で制限がり、股関節外転位で改善した場合は、大腿筋膜張筋(TFL)のタイトネスが主な制限因子と考えられます。


これは、股関節を外転することで大腿筋膜張筋(TFL)が緩み、膝関節屈曲の動きが行いやすくなるためです。


一方、股関節中間位と外転位のどちらでも制限が認められる場合は、大腿直筋のタイトネスが主な制限因子と考えられます。


股関節中間位

股関節外転位

考えられる制限因子

制限あり

改善する(膝屈曲可動域が向上する)

大腿筋膜張筋(TFL)のタイトネス

制限あり

改善しない(膝屈曲可動域に変化がない)

大腿直筋のタイトネス


まとめ


HBD testは、大腿前面の柔軟性を評価する代表的な検査ですが、HBDの延長=大腿直筋のタイトネスとは限りません。


股関節中間位では、大腿直筋と大腿筋膜張筋(TFL)の両方が膝屈曲の制限因子となる可能性があります。一方、股関節外転位ではTFLの影響を少なくできるため、大腿直筋の柔軟性をより正確に評価できます。


つまり、股関節の肢位を変えながらHBDを比較することで、大腿直筋とTFLのどちらが制限因子となっているかを鑑別することが可能です。


この評価を取り入れることで、大腿直筋へのストレッチを行うべきか、それともTFLへのリリースや滑走性改善を優先すべきかを判断しやすくなり、より効果的なアプローチにつながります。


HBDの距離だけでなく、股関節の肢位によってHBDがどのように変化するかに着目し、日々のリハビリや運動指導に活用してみてください。


参考文献


  1. Marks, M. C., Alexander, J., Sutherland, D. H., & Chambers, H. G. (2003). Clinical utility of the Duncan-Ely test for rectus femoris dysfunction during the swing phase of gait. Developmental Medicine & Child Neurology, 45(11), 763–768.

  2. Magee DJ, Manske RC. Orthopedic Physical Assessment. 7th ed. Elsevier; 2021.

  3. Thompson CW, Floyd RT. 中村千秋・竹内真希訳.『身体運動の機能解剖[改訂版]』医道の日本社;2002.

  4. Prone Heel to Butt Test | Quad and Hip Flexor Test. YouTube.

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