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セルフケアはなぜ定着しないのか?筋骨格系疾患におけるセルフマネジメントの課題と実践ポイント

  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

Key Points:この論文から見えてきたこと


  • セルフケアは「大切なこと」と理解されていても、現場にはなかなか定着していません。

  • 「この運動を自宅でもやっておいてください」という言葉は、使い方を誤ると逆効果になります。

  • セルフケアの本質は、「増やす」のではなく「減らす」ことで生まれます。

  • セルフケアは、「介入」ではなく「専門家としての在り方」が問われる領域です。


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はじめに


「運動を続けてください」、「日常生活で気をつけてください」患者やクライアントにそう伝えたとき、どのような反応をしますか?


セルフケアという言葉は、トレーナーやセラピストの間で広く浸透しています。


患者自身が健康を管理するセルフケアは、とても重要な考え方です。


 しかし実際には、「本人にやっていただくように伝えた」という状態になり、結果として丸投げに近い形になってしまっているケースも少なくありません。


トレーナー風の人物が指を指し、自宅でのエクササイズと姿勢に関する注意を教示。背景はシンプルで落ち着いた雰囲気。

今回取り上げる研究レビューは2025年に開催された国際フォーラムで、研究者と臨床家が「なぜセルフマネジメントは現場に根づかないのか」という問いを軸に議論をまとめた内容です。


そこで明らかになったのは、単なるスキルやツールの不足ではありません。


セルフマネジメントの定義そのものの曖昧さ、制度的な構造、そして「セルフケア=患者の責任」とする根強い認識が、複雑に影響し合っているという実態でした。


この記事では、これらの議論を整理し、臨床や運動指導の現場でどのように活かせるのかを解説します。


この記事の内容を音声で聞く

Background & Objective:背景と目的


慢性疾患は世界的な健康課題であり、治癒が難しい疾患においては、患者自身が長期的に状態を管理する能力が求められます。


腰痛や頚部痛をはじめとする筋骨格系疾患においても、セルフケアを促すことは、患者に合わせたケアにおいて重要です。


しかし実際には、言葉の定義が研究・教育・臨床で統一されていないことに加え、制度的・文化的な障壁や、患者が求めるものと医療システムの評価軸とのズレがあり、これらが現場への定着や広い普及を妨げています。


今回紹介する論文は、この問題意識のもと、2025年6月に開催された国際フォーラム(第19回 腰痛・頸部痛研究国際フォーラム)における議論を整理し、発展させたものです。


Methods:方法


プロフェッショナル・プラクティス論文(議論・提言型)であり、国際フォーラムのセッション(参加者34名)を主なデータ源としています。


参加者は小グループに分かれ、①セルフマネジメント実装における研究ギャップ、②実装の阻害・促進要因について議論しました。


議論の内容はフリップチャートに記録され、その後、テーマ分析が行われています。さらに、フォーラム参加者を含む49名がアンケートに回答し、原稿に対するフィードバックが収集されました。


Results:主な結果


議論の結果、セルフケアが現場に広がらない理由として、研究の中でまだ整理されていない課題と、実際の現場でぶつかる3つの壁があることが明らかになりました。


セルフケアを難しくさせている5つの視点(研究上の課題)


研究の課題に関する図。セルフケアの定義、方法の使い回し、不一致評価、個人問題の強調。疑問符や人のイラストあり。

セルフケアの定義が人によって異なる

研究・教育・臨床で「セルフマネジメント」の定義が統一されておらず、エビデンスの統合や比較が難しくなっています。この定義のばらつきが、セルフケアとして「何をすればいいか」を判断しにくくしています。


たとえば、あるセラピストは「ホームエクササイズを指導すること」をセルフマネジメントだと考え、別のセラピストは「患者が自分の状態を理解して意思決定できるよう関わること」だと考えています。


どちらも間違いではありませんが、前者は「手段」、後者は「目的」の話をしています。

うまくいった方法が、別の環境では通用しない

研究で明らかにされた方法は、多くの場合、特定の国や文化、言語、年齢層、教育レベルの集団で検証されています。


そのため、研究で効果があった=誰にでもそのまま使えるとは限りません。


重要なのは、その方法をそのまま当てはめることではなく、目の前の患者の状況に合わせて、伝え方や内容、タイミングを調整することです。

スコアが改善しても、患者が「よくなった」と感じない

現在の評価指標は、参加や自律性、自信といった、患者が大切にしている変化を十分に捉えきれていません。


例えば、VASやNDIなどの指標は、痛みや機能の変化を把握するうえでは有用です。しかし患者が本当に知りたいのは、「また子どもと遊べるか」や「仕事に戻れるか」、「痛みと上手につきあえるか」といった、日常生活に直結する変化です。


つまり、「測っていること」と「患者が期待していること」がズレてしまっている状態です。


このズレがあると、セルフケアとして処方する内容が本人の望むものと噛み合わなくなり定着しずらくなります。

なぜあの患者は変わったのかが、実はよくわかっていない

セルフマネジメント支援がうまくいくときは、いくつかの変化が同時に起きています。


たとえば、痛みへの不安が減る、自分でできるという感覚が高まる、痛みの捉え方が変わる、日常の行動が変わるといった変化です。


患者が変化したときに「何が変わりましたか?」と問いかけてみると、「痛みが怖くなくなった」「自分でできる気がしてきた」といった言葉が返ってきます。


その言葉の中に、その人にとっての変化のきっかけが隠れている可能性があります。

セルフケアの遵守率が引くのは意志が弱いのではなく、環境が整っていないから

「運動を続けてください」と伝えても、それを実行できるかどうかは、患者の意志だけで決まるものではありません。


帰宅後に運動する時間があるか、家族の理解が得られるか、職場で無理をしない選択ができるかなど、生活環境への配慮が必要です。


「自宅でやろうとしたとき、何か問題になりそうなことはありますか?」と問いかけるだけでも、環境の課題が見えてきます。


その解決策を一緒に考えることが、継続できるセルフケアにつながります。


セルフケアが現場に定着しない3つの原因


セルフケアが現場に定着しない原因を示す図。介護士と患者、電球と吹き出し、背中を押さえる人物。左から「制度上の問題」「セラピスト側の問題」「患者側の問題」。

制度上の問題

現在の報酬制度は、「どれだけ手技をしたか」、「どれだけ処置を行ったか」といった目に見える行為が中心に評価されます。


そのため、患者教育やコーチング、遠隔でのフォローといった本来重要視すべセルフケアは、十分に評価されにくい仕組みになっています。

セラピスト側の問題

患者の行動変容を引き出すスキルが十分でないことに加え、「痛み=組織の問題」という考え方が強く残っています。


そのため、「痛みを取ること」が優先され、患者の活動を広げていくようなセルフケア優先度が低い傾向にあります。

患者側の問題

セルフケアが「自分でやらされること」や「見放されたこと」と受け取られ、負担に感じられる場合があります。


また、「診てもらう」、「治してもらう」といった受け身の期待や、画像所見で問題があるから問題があると誤った信念などが主体的な関わりを妨げる要因になります。


Limitations:限界


正式な実証研究ではなく、フォーラムセッションの議論に基づくプロフェッショナル・プラクティス論文です。


参加者は自己選択バイアスが想定され(セルフマネジメントへの関心が高い研究者・臨床家が多い)、患者・市民は議論に参加していません。


データも逐語録ではなくメモに基づくため、議論の深さが完全には反映されていない可能性があります。


Clinical Implications:臨床的示唆


この研究では、臨床や運動指導の現場ですぐに活かせる実践的なヒントを、以下のように示しています。


「任せた」ではなく、「一緒にやる」を言葉にして伝える


「自分で管理してください」という言葉は、患者によっては「見放された」と受け取られます。


セッションの中で「一緒に考えながら進めていきましょう」「困ったらいつでも相談してください」と明示することで、患者の負担感ではなく安心感につながります。


初回評価で「期待」と「不安」を拾う


患者が「治してもらいに来た」という受動的な期待を持っている場合、いきなりセルフマネジメントを促しても摩擦が生じます。


例えば、会話の中で「今日はどんなことを期待していますか?」、「私にでできることと、サポートしてほしいことを教えてください」といった問いかけで、セルフケアの方向性をすり合わせることが必要です。


「やってください」で終わる指導を見直す


エクササイズを伝えるだけで終わるセッションは、指示であって適切なセルフケアの方法ではありません。


「なぜこの動きが必要か」、「続けるうえで障壁になりそうなことは何か」、「うまくできたらどう感じそうか」を一緒に話すことで、患者が自分ごととして取り組む土台ができます。


毎回やっている手技を一度棚卸しする


この手技やエクササイズは、毎回本当に必要か?と問い直すことがセルフケアの時間をつくる第一歩です。


習慣的に続けている受動的なケアを一つ減らすだけでも、患者教育やフォローアップに充てられる時間が生まれます。


セルフケアを促したいのであれば、まずは何かをやめることから始めることが重要です。


セッションとセッションの間をつなぐ仕組みをつくる


ビデオ通話での短いフォローアップや、アプリを使ったセルフモニタリング、メッセージでの一言の声かけなどこうした方法を組み合わせることで、日常生活の中での行動変容を後押しすることができます。


完璧な仕組みである必要はありません。


患者やクライアントがつながっている感覚を持ってもらうことが、継続につながります。


まとめ


白い背景に「POINT」と書かれた黒いボタンと、「セルフケアは‘丸投げ’ではなく、患者やクライアントとの関わり方の質で決まります。」のテキストがある。下部に「Physioplus」のロゴ。

セルフケアは、単に「任せること」ではなく、日々の関わり方の中で形づくられていくものです。


つまり、セルフケアは丸投げではなく、患者やクライアントの関わり方の質によってその成否が左右されます。


重要なのは、「何を教えるか」だけでなく、「どのように関わるか」、そして「どのように継続できる形にするか」という視点です。


大きな仕組みを変えることは容易ではありませんが、目の前の患者との対話や関わり方は、明日からでも見直すことができます。


その小さな変化の積み重ねが、セルフケアを「定着するもの」へと変えていく一歩になります。



参考文献


2件のコメント


不明なメンバー
1日前

日々のトレーニングのあり方を考えさせる内容でした!ペアストレッチの時間を5分削って、ヒアリングの時間を設け、自宅でのケアについて踏み込み、クライアントに寄り添う事の大切さを改めて感じさせてくれました。

ありがとうございます。

いいね!
不明なメンバー
8時間前
返信先

コメントありがとうございます。今までやっていた内容も急に切ってしまうと満足度が下がってしまうかもしれませんので、まずはペアストレッチの時間の中でヒアリングしながら、「こうやって今やっているストレッチも家でできる簡単な方法とか紹介できますが、よかったらこの後に一緒にやってみませんか?」みたいな入口からセルフケアの方法を提案しても良いかもしれませんね。相手が何を求めているのか、期待しているのかを理解して寄り添うことはとても重要だと思います。こちらこそ、コメントいただき誠にありがとうございました。

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