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神経発達から考えるコレクティブエクササイズとは?|運動制御と動作再学習の考え方

  • 1 日前
  • 読了時間: 6分

はじめに


人間の運動は、胎児期から始まり、生涯を通じて変化し続けます。なかでも生後約13ヶ月までの期間は、中枢神経系が急速に成熟し、姿勢のコントロールや移動能力といった基本的な運動機能が形成される重要な時期です。


この時期に獲得される運動パターンは、その後の動作の土台となり、効率的な身体の使い方に大きく関与します。


近年では、この乳幼児期の神経発達プロセス(Neurodevelopmental Sequence:NDS)に着目し、成人のリハビリテーションやトレーニングに応用する考え方が広がっています[1]。


発育に基づくエクササイズの順序を示す図。仰向けから歩行までの赤ちゃんのイラスト。矢印でレベル進行を表示。

ここで重要なのは、「赤ちゃんの動きをそのまま再現すること」ではなく、人間が本来備えている効率的な運動制御のパターンを再学習・再活性化することにあります。


本記事では、運動の質を高めるうえで重要となる神経発達のプロセスに着目し、この視点がどのように動作の獲得につながるのかを整理して解説します。



なぜ、神経発達の視点をエクササイズに取り入れるべきなのか?


1. 人間が本来持っている正しい動きの土台に立ち返る


人間の運動は、誰かに教えられる前に、感覚フィードバックをもとに自発的に獲得されていきます。


乳幼児は、触覚・前庭感覚・固有受容感覚といった情報をもとに試行錯誤を繰り返しながら、「どのように動けば安定するか」「どのようにすれば効率よく力を発揮できるか」を自然に学習していきます。


この過程で形成される運動パターンは、一時的なスキルではなく、中枢神経系に組み込まれた動作の基盤となるものです。いわば、あらゆる運動の前提となる土台として機能します[1]。


一方で、怪我や手術、生活習慣、非効率な動作の反復によって、この土台が崩れることがあります。


その結果、代償動作の増加や局所への過負荷、動作の再現性の低下といった問題が生じます。


このような状態に対して、フォームの修正や筋力強化だけでは、根本的な改善につながらないケースも少なくありません。


エクササイズに神経発達の視点を取り入れる理由は、運動獲得プロセスの再学習を通じて、崩れた運動制御の土台を再構築できる点にあります。


2. 重力に適応するための姿勢を、段階的に再学習していく


人間の運動は、常に重力の影響を受けながら行われています。


発達の初期段階では、仰向けやうつ伏せといった支持基底面の広い姿勢から始まり、寝返り、四つ這い、立位へと段階的に移行していきます[1],[2]。


この過程では、支持基底面が徐々に小さくなる一方で、重心の位置は高くなり、より高度な姿勢制御が求められます。


そのため、仰向けや四つ這いといった低い姿勢でのコントロールを再獲得し、段階的に負荷を高めていくことで、無理のない形で姿勢制御能力を再構築することが可能になります。



3. 関節が最も効率よく動ける正しい位置を獲得する


運動の質を高めるうえで重要となるのが、関節の位置関係です。発育発達の視点では、これを関節の中心化(Joint Centration)として捉えます[3]。


関節の中心化とは、関節面同士が適切な位置関係を保ち、周囲の筋群がバランスよく協調して働いている状態を指します。


この状態では、過剰な筋緊張に頼ることなく、最小限の力で安定性と可動性を両立することが可能になります。


例えば股関節では、大殿筋や腸腰筋などが協調して働くことで、大腿骨頭は寛骨臼の中で安定した位置を保ちながら回転します。


しかし、これらの筋の機能が低下すると、大腿直筋や大腿筋膜張筋といった表層筋が代償的に働き、関節の回転軸がずれやすくなります。


股関節の中心化を示す図。左は安定した大腿骨頭、右は偏位した状態。背景は白。図内に説明テキストあり。

その結果、大腿骨頭が前方へ滑るような動きが生じ、関節への負担が増加します。


同様に肩関節では、ローテーターカフが上腕骨頭を関節窩の適切な位置に保つ役割を担っています。


これが十分に機能しない場合、大円筋や広背筋が代償的に働き、上腕骨頭が前方へ引き出されるような動きが生じます。


肩関節の中心化を示す図。左が安定した状態、右が崩れた状態。両方の図で腕が上に上がり、矢印とテキストが説明。

その結果、関節内のストレスが増大し、痛みや機能低下につながります。


このように関節の中心化は、特定の筋だけでなく、筋群全体の協調によって成立します。


乳幼児は発達の過程で、四つ這いや座位といった姿勢の中で重力に抗しながら関節を安定させる経験を繰り返し、この最適な位置関係を獲得していきます。



神経発達段階から考えるコレクティブエクササイズの進め方


神経発達のプロセスは、いくつかの主要な姿勢とパターンの組み合わせとして理解できます。これらは、運動指導における負荷設定や段階的進行(プログレッション)の指標となります。


以下に、神経発達とコレクティブエクササイズについてまとめています。


6ヶ月から3歳までの子どもの発達段階を示す表。ハイハイ、スクワット、片脚立位の写真。発達に応じたエクササイズの説明付き。
表には、赤ちゃんの発達段階と、それに対応する機能が記載。背景に赤ちゃんの姿勢を示す写真。タイトルは「Physioplus」。
赤ちゃんの発達段階を示す表。3.5ヶ月と4.5ヶ月の異なる動作が説明され、赤ちゃんの写真が3枚掲載。背景は白。テキストは日本語。

仰臥位(Supine)

背中を床につけた状態。最も支持面が広く、安定しています。  

伏臥位(Prone)

腹ばいの状態。背面の筋肉の活性化や、前腕での支持(肘支持)を学びます。  

四つ這い(4pt/Quadruped)

手と膝で支える状態。体幹の安定性と、四肢の連動性を高めます。

座位(Sitting)

骨盤の上に体幹を垂直に保つ状態。

膝立ち(Kneeling)

股関節の伸展と体幹の垂直保持を両立させます。

立位(Standing)

足の裏のみが支持面となる、最も難易度の高い姿勢です。


リハビリや運動指導への活用方法


神経発達の視点を現場に活かすうえで重要なのは、動作を部分的に見るのではなく、全身の動作システムとして捉えることです。


動作のエラーは、その動作だけの問題ではなく、より基礎的な機能の影響を受けている可能性があります。


神経発達の順序に沿ってエクササイズを進めることは、評価であると同時に、そのままエクササイズにもつながります


例えば、スクワットがうまくできない場合でも、いきなり立位でフォームを修正するのではなく、仰臥位や四つ這いといったより低い姿勢まで戻り、可動域や安定性を確認します。


神経発達に基づくエクササイズ例。左は仰向けでボールを使った運動、右は四つん這いのエクササイズ。指導文とPhysioPlusのロゴ。

この段階で十分なコントロールができていなければ、立位での修正が難しいことは明らかです。


このように、発達の順序に沿って評価と進行を一貫して行うことで、代償を抑えながら、効率的で再現性の高い動作を獲得することが可能になります。



まとめ


神経発達の視点をエクササイズに取り入れることは、人間が本来持っている効率的な動作の仕組みを再学習するプロセスです。


発達の順序はすべての人に共通する基本的な原理であり、リハビリや運動指導においても有効な指標となります。


安定した姿勢から段階的に負荷を高めていくことで、無理のない形で動作を再構築することが可能になります。


機能障害の問題を単なる筋力や関節の問題として捉えるのではなく、運動制御(モーターコントロール)の視点から評価することで、より本質的で持続的な改善につながります。



参考文献


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