モートン病(Morton's Neuroma)
- フィジオプラス

- 2025年10月8日
- 読了時間: 5分
はじめに
モートン病(Morton's Neuroma)は、足の前足部に生じる一般的な神経障害で、臨床現場では中高年の女性に好発する疾患です。
これは足底指神経に関連する絞扼性神経障害であり、深横中足骨靭帯(DTML)の下で神経が圧迫されることによって発症しやすいとされています。
患者は歩行時や特定の靴(特にハイヒールや幅の狭い靴)の着用時に、灼熱感や鋭い痛み、しびれなどを訴えることが多く、日常生活や運動指導における活動制限の原因となります。
一般的には第2〜3中足骨頭または第3〜4中足骨頭の間の中足骨間足趾神経に影響を及ぼし、その結果、影響を受けた神経が圧迫されます。(第3〜4趾間の趾神経は内側足底神経と外側足底神経が合流する部位であり、特に絞扼されやすい)
主な症状は痛みやしびれであり、履物を脱ぐと軽減されることがあります。

症状の特徴
症状としては、中足骨頭間の足底部の鋭い痛み、灼熱感、および関連する2本の趾先への放散痛、しびれ、または感覚異常(parethesia)などが認められます。[1],[2]一方で、症状は安静にしたり靴を脱いだりすることで軽減することがあります。
好発しやすい人の特徴
主な原因とリスク要因
直接的な圧迫:中足骨頭の間で神経が深横中足骨靭帯に慢性的に圧迫され、趾神経が繰り返し絞扼を受けると、変形・肥厚し偽性神経腫が形成されます。
バイオメカニクス的要因:ふくらはぎの硬さや、回内足/回外足といった足のアライメント(並び)の崩れがあると、前足部に不適切な負荷がかかり、神経への圧力を増やす要因となります。
身体活動と足の変形:ランニングなどの高衝撃なスポーツや、外反母趾といった既存の足の変形も、神経への反復的な外傷リスクを高める要因となります。

鑑別診断(他の疾患と区別するためにおさえておくべき基本知識)
モートン病の症状は、他の前足部痛や神経症状を呈する疾患と類似することがあるため、症状を正確に理解するには、鑑別診断の基本的な知識を身につけておくことが重要です。
疾患名 | 鑑別するポイント | 症状の特徴 |
中足骨頭痛症(Metatarsalgia) | 特定の趾間だけでなく、中足骨頭全体に広がる鈍い痛みが主症状。神経症状(しびれ、灼熱感)はモートン病ほど顕著でない場合が多い。 | 前足部の過負荷が原因。特に第2中足骨頭下に好発します。 |
中足骨疲労骨折(Metatarsal Stress Fracture) | 荷重や活動で悪化する持続的な痛み。患部の中足骨に沿った限局性の圧痛。 | 急な運動量増加やランニングなど、繰り返しの衝撃負荷の既往。夜間痛を伴うことがあります。 |
椎間板ヘルニアなどの腰椎からく下肢に放散する神経根症状 | 足底ではなく、下腿から足全体にかけて放散する痛みやしびれ。特に腰部や臀部の姿勢変化や動作に関連した症状の悪化があります。 | 複数の神経根領域の感覚・筋力低下、深部腱反射の異常などが認められます。 |
理学療法評価
問診(主観的評価)と身体検査(客観的評価)を組み合わせながら行います。
姿勢/動作スクリーニング
姿勢評価:静的アライメント(特に足部の回内・回外の程度やアーチの機能、外反母趾の有無など)を確認する。
歩行分析:荷重時の疼痛回避動作や、前足部の不安定性を確認します。
機能評価
Webspace Tenderness Test(趾間圧痛)
Metatarsal Squeeze Test(中足骨圧迫テスト)[3]
Tinel's Sign(ティネル徴候)
足関節背屈可動域検査
その他の評価
Visual Analog Scale (VAS) / Numeric Rating Scale (NRS)
Foot and Ankle Outcome Score (FAOS) / Foot and Ankle Ability Measure (FAAM)
理学療法管理と介入
モートン病の治療は、まず保存療法から開始することが臨床ガイドラインで推奨されており、通常3〜6ヶ月間継続されます。[4]
主な介入方法
介入方法 | 主な目的 |
靴の変更と指導 | 普段の生活や運動時の靴を具体的に確認し、適切な靴の選び方を指導します。特に前足部の圧迫が認められる場合は軽減する方法を提案し、神経へのストレスを減少させるよう管理します。靴はつま先の幅が広く、ヒールの低い靴(ヒール高4cm未満)を推奨します。 |
足底パッドやインソールの作成 | 中足骨ドームパッドやカスタムメイドの足底板は、中足骨頭を広げることで、荷重時に神経へ加わる圧迫を軽減させます。市販の中足骨パッドを活用するほか、理学療法士や医師と連携して作製するオーダーメイドのインソールの使用も推奨されます。 |
運動療法 | 腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性の低下は、前足部への過負荷を招く一因となるため、ストレッチングによって柔軟性を改善することが重要です。加えて、足内在筋の強化や足関節・股関節を含めた運動連鎖の改善を目的としたエクササイズを組み合わせることで、足部の安定性を高め、適切な荷重分散を促進することが期待できます。 |
予後
多くの症例では、靴の変更や足底板の使用など、適切な保存療法によって症状が改善します。神経腫が線維化・肥厚し症状が固定化した場合、自然に治癒することは難しいですが、適切な管理によって症状が軽減することは多いとされています。
手術による神経切除は成功率が高いとされていますが、術後のしびれ(感覚消失)や切断端神経腫の形成といった合併症のリスクがあります。[5]
良好な予後には、症状が軽度の段階での早期介入が重要です。神経腫の線維化や肥厚が進行している場合には、保存療法の効果が得られにくい傾向があります。
参考文献
Morgan, E., & Mathieson, A. B. (2024). Morton Neuroma. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing.
Bencardino, J. T. (2000). Morton's Neuroma Is It Always Symptomatic?. American Journal of Roentgenology, 175(3), 649-652.
Wang, R., et al. (2024). Diagnostic Accuracy of Subjective Features and Physical Examination Tests for Morton Neuroma: A Systematic Review. Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons, 32(4), e224-e233.
Quinn, P., et al. (2018). Treatment of Morton's neuroma: A systematic review. Foot and Ankle Surgery, 24(4), 271-281.
Singh, S. M., et al. (2023). Effect of surgical approach on the treatment of Morton's neuroma: a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskeletal Disorders, 24(1), 1-13.



コメント