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ストレッチの効果とは?エビデンスで整理する「できること・できないこと」と最適な秒数・頻度の目安

  • 2 時間前
  • 読了時間: 6分


はじめに


セラピストやトレーナーにとって、ストレッチは関節可動域の改善を主な目的に、ウォーミングアップやクーリングダウン、さらには健康増進の一環として幅広く活用されています。


こうした背景から、ストレッチは「万能薬」のように捉えられることも少なくありません。


しかし、現在の運動科学の観点からみると、その認識は必ずしも適切とは言えません。


白背景に黒字のテキスト。「Kye Point」「ストレッチ=万能薬とは限りません」。下に参考文献とPhysioplusロゴ。

近年の研究では、ストレッチングの効果は一様ではなく、様式・時間・実施タイミングによって大きく変化することが明らかになっています。


つまり、同じストレッチであっても、目的や方法を誤ればパフォーマンスを低下させる可能性があり、適切に用いれば機能改善や傷害予防に寄与する可能性があります。


本記事では、ストレッチの効果について、「できること」と「できないこと」を複数の文献に基づいて整理し、エビデンスを踏まえながら、臨床や運動指導において適切に活用するための視点を解説します。



ストレッチの効果とは?「できること・できないこと」をエビデンスに基づいて解説


まず、複数の研究レビューに基づき、ストレッチの「できること」と「できないこと」を詳しく解説します。


ストレッチで効果が期待できるもの


ストレッチする女性のイラスト。背景にはストレッチの効果に関する日本語の説明文。全体的に明るい色合い。

関節可動域(ROM)の向上


スタティックストレッチ(静的ストレッチ)は、関節可動域を即時的かつ長期的に向上させることが、多くの研究で示されています[1]。


この背景には、組織の粘弾性の変化に加え、痛みの閾値が変化する「ストレッチ耐性」の向上といった神経学的要因が関与していると考えられています。



表:ストレッチで柔軟性が高まる主なメカニズム

ストレッチ耐性の向上(感覚の変化)

ストレッチによる柔軟性の向上は、筋肉そのものの変化よりも、「どこまで伸ばしても大丈夫か」という感覚の変化が大きく関係しています。


筋肉を伸ばした際の痛みや不快感に対する耐性(ストレッチ耐性)が高まることで、より深い可動域まで動かせるようになります。

神経学的要因(防御反応の低下)

筋肉には、急激な伸張から身を守るために、無意識に収縮する「伸張反射」が備わっています。ゆっくりと行うスタティックストレッチングは、この反射活動を抑制する作用があります。


具体的には、筋紡錘の感度低下やα運動ニューロンの興奮抑制が生じ、筋肉の緊張が和らぎます。その結果、筋肉は抵抗せず、伸びやすい状態になります。

組織の粘弾性の変化(物理的変化とその限界)

ストレッチ中は、筋肉や腱の粘弾性が低下し、一時的に組織が伸びやすくなります。


ただし、この変化は持続的なものではなく、時間の経過とともに元に戻ります。


そのため、ストレッチ初期の可動域向上は、主に感覚や神経の変化による影響が大きいと考えられています。


一方で、3週間以上継続すると、サルコメアの増加など構造的な適応が生じ、より持続的な変化につながる可能性があります。


ストレッチで効果が限定的とされるもの


筋肉ポーズの男性とストレッチする女性が並ぶ。男性は青いシャツ、女性は緑のシャツと赤いショートパンツ。背景に「ストレッチで効果が限定的とされるもの」と書かれている。

急性的な筋力・パワーの向上や怪我の予防


ストレッチは関節可動域の改善などに有効な手段ですが、すべての目的を満たす万能な方法ではありません。


特に、パフォーマンス向上や怪我予防といった点においては、実施方法や条件によって効果が異なり、単独では十分な効果が得られない場合があります。


実際には以下のことが研究で示されています。



表:ストレッチで効果が限定的とされるもの

パフォーマンスを高めること

スタティックストレッチやPNFは、実施直後の筋力やジャンプパフォーマンスをむしろ低下させることが示されています。


特に1部位あたり60秒以上の実施では、その影響が大きくなる傾向があります。


また、このようなパフォーマンス低下は一過性であり、ストレッチ後に動的なウォーミングアップを行うことで、影響はほぼ解消されると報告されています[2]。

単独で怪我を予防すること(万能な予防手段)

ストレッチ単独では、スポーツ障害の予防効果は明確に認められていません。


また、運動前のストレッチがすべての怪我を予防するという考えも、現在では支持されていません[2],[3]。

筋力トレーニングの代替になること

怪我予防の観点では、筋力トレーニングが最も高い効果を示し、スポーツ障害の発生を大きく低減させることが報告されています。


一方で、ストレッチはこの役割を代替することはできません[3]。

すべての競技・状況に一律で有効であること

ストレッチの効果は、競技特性や実施条件によって異なります。


例えば、スプリントや急激な伸張を伴う競技では筋損傷のリスク低減に寄与する可能性が示唆されていますが、すべての状況において一律に有効とは言えません[2]。


ストレッチングを正しく効果的に処方するためのヒント


ストレッチは、目的・頻度・タイミングによって効果が大きく変わるため、以下の基準をもとに実施することが重要です。


運動前後の目的、時間、頻度を比較する表。通常、運動前、運動後の3つの列があり、目的や実施のポイントが記載されています。


関節可動域(ROM)改善を目的とする場合


1回あたり30〜60秒の保持を基本とし、これを複数回に分けて実施します。15秒未満では効果が不十分であり、60秒を超えても上乗せ効果は限定的とされています[4]。


また、単回の実施だけでなく、週単位での総ストレッチ時間が重要です。例えば、1つの筋群につき、週合計300秒以上を目安に実施することで、関節可動域(ROM)の改善効果が高まります[4]。


高齢者においては、30秒よりも60秒程度の保持が有効となる可能性があります[5]。



運動前に実施する場合


パフォーマンス低下を防ぐため、スタティックストレッチは各部位30秒未満に留めます。


また、ストレッチ後はそのまま運動に移行するのではなく、必ずダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)や軽度の運動を組み合わせ、身体を動的な状態に移行させることが推奨されます[2]。



運動後・リラクゼーション目的の場合


運動後にスタティックストレッチを行うことで、副交感神経が優位となり、リラクゼーションや回復を促進する効果が期待されます。


この場合は、運動前ほど秒数に厳密な制限はなく、目的に応じて調整可能です。


まとめ


ストレッチの効果と限界について、システマティックレビューをもとに整理してみました。


ストレッチは関節可動域の改善には有効である一方、実施方法によってはパフォーマンスを低下させる可能性があり、単独での怪我予防効果も限定的であることが示されています。


効果は様式・時間・タイミングによって変化するため、目的に応じた使い分けが重要です。


適切な秒数や頻度、実施タイミングを踏まえ、ダイナミックストレッチングや筋力トレーニングと組み合わせて活用することが、臨床や運動指導において重要です。



参考文献


  1. Thomas, E., et al. (2018). The Relation Between Stretching Typology and Stretching Duration: The Effects on Range of Motion. International Journal of Sports Medicine.

  2. Behm, D. G., et al. (2016). Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism.

  3. Lauersen, J. B., et al. (2014). The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine.

  4. Thomas, E., et al. (2018). The Relation Between Stretching Typology and Stretching Duration: The Effects on Range of Motion. International Journal of Sports Medicine. (Note: Re-referenced for total weekly volume data).

  5. 中村雅俊(2022).ストレッチングアップデート ―ストレッチングで“予防できるもの”と“予防出来ないもの―.『理学療法の歩み』,33(1

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