【2026年版】ACSM最新トレンドから読み解く、トレーナー・セラピストに求められる「価値」とは?
- フィジオプラス

- 1月2日
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はじめに
近年、理学療法士の医療国家資格者の予防領域の参入が増加しており、メディカルとフィットネスの境界線がかつてないほど曖昧になり、運動指導者に求められる役割は劇的な変化を遂げています。
これからのトレーナーやセラピストに求められるのは、単に「運動を指導できる」スキルだけではありません。最新のテクノロジーを使いこなし、医学の知識を土台に、痛みや身体だけでなく、ストレス・働き方・生活環境などの影響も含めて捉え、多方面から健康を支える専門家としての役割です。
本記事では、アメリカスポーツ医学会(ACSM)が発表した2026年の世界フィットネストレンドの最新動向を基に、2026年に必要とされるトレーナー。セラピストの専門家の価値についてわかりやすく解説していきます。[1]
2026年 ACSM フィットネス・トレンド Top 10
ACSM(アメリカスポーツ医学会)が発表した「2026年 世界フィットネス・トレンド調査」をもとに、トップ10の動向を整理しながら解説していきます。
2026年を一言でまとめるなら、キーワードはデータをどう活用するか、そして長く、社会の中で健康に過ごすために最新テクノロジーと人生100年時代を見据えた視点が強く反映された結果となっています。

データを読み取り、患者やクライアントの行動や習慣をサポートする。
2026年のトレンド第1位に返り咲いたのは「ウェアラブル・テクノロジー」です。 スマートウォッチや心拍計は、もはや単なるガジェットではありません。いまや、体の変化を客観的にとらえ、臨床的な意思決定を支える重要なデバイスになっています。
近年の研究でも、ウェアラブルを活用した介入は、メタボリックシンドロームのリスク低減や、歩行習慣の定着などにおいて、従来のアプローチより良い結果を示すことが報告されています[2]。
しかし、大切なのは、データを「集める」ことではありません。重要なのは、その数字をどう読み取り、指導やトレーニングにどう生かすかです。

たとえば、睡眠の質や心拍変動(HRV)、血糖値といったバイオフィードバックを参考にしながら、その日のトレーニング強度をリアルタイムで調整する。これが、ACSMの最新トレンド第8位にも挙げられています。
年齢を重ねても動ける体をつくる、専門的サポート
最新トレンド第2位にランクインした「高齢者向けフィットネス」は、2026年においても、間違いなく最重要分野のひとつです。
超高齢社会を迎える中で、運動指導のゴールは機能低下を食い止めることだけではなく、「その人らしい生活を、どれだけ長く守れるか」という、QOL(生活の質)の向上へとシフトしています。

フレイルやサルコペニア対策の研究は、このテーマをさらに後押ししています。最新のシステマティックレビューでは、高強度のレジスタンストレーニングが、筋量や筋力の減少を抱える高齢者に対して、生活の質を有意に改善し、自分で動ける力を取り戻すことに寄与することが示されています[3]。
運動は「なんとなく体に良いもの」ではなく、科学的に体そのものを健康な状態へ変えていく方法として認知されるようになってきています。
こうした背景を踏まえると、セラピストやトレーナーに求められる役割も、より高度で繊細なものになります。
単に筋トレを処方するのではなく、年齢、既往歴、心理的な不安、回復スピードといった多くの要素を見極めた上で、安全性と効果を両立させる「個別化された負荷設定」を提示すること。
誰にでも同じプログラムを当てはめるのではなく、その人の人生や生活にフィットする運動を設計できるかどうか。まさにそこに、専門家としての価値が問われます。
GLP-1で体重は減るけど、運動指導は何を目指すべきか
2026年のトレンド第3位には、「体重管理のための運動」がランクインしました。
この背景には、GLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)が急速に普及しているという、いまの医療トレンドがあります。いわゆる飲む(打つ)だけで痩せる薬として注目され、現場でも実際に使われる機会が増えてきました。
しかし、ここで考えるべきなのは「薬が効く=運動はいらない」という単純な話ではない、ということです。
最新の臨床データでは、GLP-1製剤による減量は確かに大きな効果を示す一方で、体脂肪だけでなく、除脂肪体重(つまり筋肉量)まで落ちてしまう可能性が指摘されています。
筋肉量が減れば、基礎代謝は下がり、体力も落ち、長期的にはリバウンドしやすい身体になってしまいます。
そこで注目されているのが、薬と運動を「組み合わせる」という発想です。2025年に発表された研究では、GLP-1に運動プログラムを加えることで、減量効果を保ちながら筋肉量を維持し、代謝の状態も改善し、さらに薬の中止後に起こりやすいリバウンドを抑えられることが示されています[4]。

これからのトレーナーやセラピストに求められるのは、薬があるから運動は不要」ではなく、薬の効果を最大限に活かすためのエクササイズを運動指導プログラムに落とし込めるスキルです。
薬の種類や作用機序を理解し、その人の生活背景や体力、筋肉量の状態をふまえて、どのタイミングで、どんな強度で、どんな運動を組み合わせるのか。
ここに、2026年以降の運動専門職としての新しい価値が生まれていくのだと思います。
ココロとカラダを一緒に整える、運動という選択肢
メンタルヘルスのための運動(トレンド第6位)は、もはや補助的な位置づけではありません。身体を動かすことは、メンタルヘルスに対する第一選択肢、あるいは薬物療法と並ぶ有力な併用手段として、確実にその地位を高めつつあります。
近年の大規模なメタ解析では、週に3〜4回、1回あたりおよそ60分の有酸素運動やレジスタンストレーニングを継続することで、うつ病や不安障害の症状が有意に軽減されることが改めて示されています[5]。
つまり、運動は「気分転換になるから良い」というレベルを超え、臨床的に意味のある介入として評価されているのです。
さらに、トレンド第5位に挙がった「バランス・フロー・コア・ストレングス」、いわゆるピラティスやヨガといったプログラムも注目されています。

これらは体幹や柔軟性を高めるだけでなく、呼吸や意識の向け方を通してマインドフルネスの要素を取り入れやすく、ストレス社会を生きる現代人にとって、非常に親和性の高いアプローチだと言えるのかもしれません。
トレーナーやセラピストは、運動が身体だけではなくメンタルや脳科学にも影響を与えるメカニズムを、わかりやすく説明できる力が求められます。そして、その理解をもとに、メンタルヘルスを視野に入れた運動介入プログラムを、自然な形で介入の中へ組み込んでいくことが重要になるかもしれません。
オンラインと対面を組み合わせる時代がさらに加速する
モバイルエクササイズアプリ(トレンド第4位)や、各種オンライン運動プログラムの普及によって、指導のかたちは確実に変わりつつあります。
いまや、対面かオンラインかという二者択一ではなく、その両方を組み合わせたハイブリッド型が主流になる可能性を示しています。
興味深いのは、オンラインだから質が落ちるというわけではありません。最新の研究では、しっかりと設計されたオンライン運動プログラムが、運動パフォーマンスの向上やメンタルヘルスの改善において、対面指導と
同等の効果を示すことが明らかになっています[6]。

むしろ、自宅や職場といった日常の環境で取り組めることで、生活への定着という点では大きなメリットです。
このような時代の変化を踏まえると、2026年以降の指導者にとって本当に重要になるのは、セッション中に何を提供できるかだけではなく、セッションが終わったあと、患者やクライアントが自分の生活の中でどう行動し、どのように運動を継続していけるのか。
そこを支えられるかどうかが、専門家としての価値を大きく左右していくのかもしれません。
まとめ
最新トレンドについて解説してきましたがいかがでしたか?
2026年に求められるトレーナーやセラピストの役割はここで紹介した最新トレンドを理解し、現場で使える形にすることです。
単に流行りの情報を知っているだけではなく、目の前の患者やクライアントに合った提案や意思決定につなげられるかどうかが重要となります。
今回紹介したACSMの最新トレンドは流行のチェックリストではなく、社会や医療、ライフスタイルの変化を映し出す指標です。
エビデンスとテクノロジーを上手につなぎ合わせて、患者やクライアントの人生にプラスの変化を起こす臨床と運動指導をつなぐカラダの専門家へと成長していけるはずです。
トレンドを知るだけで終わらせず、現場で「価値」に変える。そんな役割を、私たち一人ひとりが果たしていきましょう。



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