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フォームローラーを活用した「セルフリリース」の期待できる効果

執筆者の写真: PhysioplusPhysioplus

更新日:2024年11月1日


フォームローラーを活用したフォームローリング(セルフリリース)の効果について

はじめに


フォームローラーを活用したセルフリリースは一般的に「筋膜リリース」などと紹介され、自宅でも比較的手軽に実施できることから人気のある運動方法です。


使用方法は主に筋肉などの組織に圧力を加えることで、柔軟性を向上させたり、運動後の筋肉痛を軽減するなどの効果が認められています。


本記事では、フォームローラーを活用したセルフリリースの期待できる効果について最新のエビデンスや知見を紹介していきます。


※文献などではフォームローリングと記載されていますが、ここではフォームローラーを活用したフォームローリングのことをセルフリリースと説明していきます。


 

セルフリリースが期待できる効果


セルフリリースの期待できる効果

「フォームローリング」や「ローラーマッサージ」など、このテーマに関連するキーワードについて書かれている文献検索サイト(PubMedなど)で調べると、多くの論文を見つけることができます。


今回の記事に関する多くの文献を解析した結果、セルフリリースによって柔軟性を高めたり、トレーニング後の回復に対する効果については有効性を裏付ける研究は沢山あります。しかし、運動パフォーマンスの向上については期待できる効果はあったとしても、それを裏付ける根拠は限定的です。

 

一般的なセルフリリースの認識に対する誤解


一般的なセルフリリースの誤解

一般的にセルフリリースは「筋膜リリース」とも言われ筋膜にアプローチすることでセルライト除去などダイエット効果があるような認識を持っている方もいらっしゃるかもしれません。


しかし、残念ながら研究では筋膜層にアプローチすることは認められておらず、またマッサージによるセルライトを除去する効果はできないと結論付けているため、現時点でフォームローラーを活用したセルフリリースによる脚の引き締め効果などについては科学的にそれらを証明することはできません。[1][2]


そのため、これらの用語はセルフリリースの効果に対して期待を煽るためのマーケティング用語であることに注意する必要があります。


では、セルフリリースをおこなうことでどのような効果が期待できるのでしょうか?


今回は現時点で裏付けされている3つの効果について簡単に説明していきたいと思います。


 

柔軟性に対するセルフリリースの効果


セルフリリースと柔軟性の効果については数多くの研究で認められています。21件の研究を対象とした2019年のシステマティックレビューではセルフリリースをウォーミングアップに活用した場合、柔軟性が改善されたという報告をまとめています。[3]


フォームローラーを活用したセルフリリースは短期的な柔軟性を改善する効果を認められていますが、定期的なセルフリリースをおこなうことによってさらに長期的な柔軟性が向上することが証明されています。[4][5]


 

リカバリーに対するセルフリリースの効果


運動後にセルフリリースを行い、筋肉痛を軽減したり、回復を促すこともフォームローラーを活用する効果の1つです。


最近の研究では、フォームローラーを活用したセルフリリースによって運動後の筋肉痛が軽減されることが示されています。[6][7][8]


しかし、これらの研究では回復効果について効果を示しているもののサンプル数が少なく、セルフリリースによって筋肉痛を軽減させる効果を証明する証拠はまだ弱いということに注意する必要があります。


 

パフォーマンス向上によるセルフリリースの効果


フォームローラーを活用したセルフリリースはウォーミングアップの代替としてトレーニングメニューに組み込まれることが増えています。


セルフリリースはストレッチ同等の効果が認められており、ダイナミックストレッチなどと組み合わせることでその効果がより発揮されるという報告されたものもあります。[9]


しかし、スプリント、ジャンプ、筋力パフォーマンスなどのさまざまなパフォーマンス指標も検討した研究ではフォームローリングの影響はかなり小さく、スプリントパフォーマンスの向上から部分的には無視できる部分であるということでした。[3]


そのため、セルフリリースによるパフォーマンス向上の効果は限定的であると言えます。


 

フォームローラーの種類と選び方


フォームローラーには沢山の種類とタイプがあります。実際にどれを選んでいいか分からないといった相談をされることが多いため、ここではフォームローラーの種類と選び方について説明していきます。


フォームローラーの種類

フォームローラーは大きく、「表面に凸凹がないタイプ」と「表面に凸凹があるタイプ」の2つの種類があります。


表面に凸凹ががないタイプではフォームローラーを圧迫した時に刺激が水平方向に加わり、広い範囲にリリースを行うことができます。


一方、表面に凸凹があるタイプでは、凸凹があるためフォームローラーを圧迫した時に垂直方向に刺激加わり、局所的にリリースを行うことができます。


そのため、フォームローラーをはじめて購入される場合はまず表面に凸凹のないタイプ(左図)のものを購入されることをおすすめします。


 

その他のセルフリリースツール


今回フォームローラーを活用したセルフリリースについてご紹介していますが、セルフリリースを行えるツールはフォームローラー以外にも沢山あります。


本記事ではフォームローラー以外のセルフリリースツールについてご紹介していきます。


セルフリリースをおこなうツールの種類

マッサージスティック


スティックタイプのセルフリリースツールです。スティックタイプなのでフォームローラーと比べて自分自身で圧力を調節できるため、特定の痛みや緊張のあるエリアに集中してリリースをおこなうことが可能。フォームローラーではやりにくい首や腕などもおこなうことができます。


マッサージボール


ボールタイプのセルフリリースツールです。フォームローラーと比較してボールなので局所的な部分にリリースすることが可能。圧力をコントロールすることができるため、胸まわりやおしり、足の裏などの痛みのある部分や緊張している筋肉に直接当てて使用することができます。


ボールの硬さも選べるため、はじめは硬すぎず柔らかすぎない程度のボール(テニスボールや練習用のソフトボールなど)を選ぶことがおすすめです。


バイブレーションフォームローラー


バイブレーション機能が付いたフォームローラーです。一般的なフォームローラーと使用方法は同じですが、バイブレーション機能ががあることで痛みが軽減されたり、血流を促すような効果が期待できます。


一般的なフォームローラーとバイブレーションフォームローラーを比較した研究ではややバイブレーションフォームローラーを活用したほうが柔軟性などの向上が認められますが、大きな差はないため必ずしもバイブレーションフォームローラーのほうがおすすめできるとは限りません。[10]


しかし、一般的なフォームローラーを使用したセルフリリースで痛みが強い場合などではバイブレーションフォームローラーを乗せるだけでも柔軟性を向上させる効果が期待できるため、そのような場合ではおすすめできるかもしれません。[11]


マッサージガン


マッサージガンは、ここ最近、非常に人気の高いをセルフリリースツールです。フォームローラー同様に筋肉のリカバリー、緊張の緩和、血流の改善、痛みの軽減などに効果的が期待できます。


最近では軽量のものやアタッチメント部分に温冷機能などがある商品もありますが一般的なフォームローラーと比較してコストが掛かります。

 

おわりに


今回は、フォームローラーを活用したセルフリリースの期待できる効果について記事にまとめてみました。


期待できる効果について十分理解しながらセルフリリースを実践してみてください。


正しくセルフリリースをおこなう方法についてはこちらのオンラインプログラムをご参照ください。





参照


  1. Behm DG, Wilke J. Do Self-Myofascial Release Devices Release Myofascia? Rolling Mechanisms: A Narrative Review. Sports Med. 2019 Aug;49(8):1173-1181.

  2. Schonvvetter B, Soares JL, Bagatin E. Longitudinal evaluation of manual lymphatic drainage for the treatment of gynoid lipodystrophy. An Bras Dermatol. 2014 Sep-Oct;89(5):712-8. doi: 10.1590/abd1806-4841.20143130.

  3. Wiewelhove T, Döweling A, Schneider C, Hottenrott L, Meyer T, Kellmann M, Pfeiffer M, Ferrauti A. A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery. Front Physiol. 2019 Apr 9;10:376.

  4. Nakamura M, Onuma R, Kiyono R, Yasaka K, Sato S, Yahata K, Fukaya T, Konrad A. The Acute and Prolonged Effects of Different Durations of Foam Rolling on Range of Motion, Muscle Stiffness, and Muscle Strength. J Sports Sci Med. 2021 Mar 1;20(1):62-68.

  5. Konrad A, Nakamura M, Tilp M, Donti O, Behm DG. Foam Rolling Training Effects on Range of Motion: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022 Oct;52(10):2523-2535.

  6. Pearcey GE, Bradbury-Squires DJ, Kawamoto JE, Drinkwater EJ, Behm DG, Button DC. Foam rolling for delayed-onset muscle soreness and recovery of dynamic performance measures. J Athl Train. 2015 Jan;50(1):5-13.

  7. Pearcey GE, Bradbury-Squires DJ, Kawamoto JE, Drinkwater EJ, Behm DG, Button DC. Foam rolling for delayed-onset muscle soreness and recovery of dynamic performance measures. J Athl Train. 2015 Jan;50(1):5-13.

  8. Cheatham SW, Kolber MJ, Cain M, Lee M. THE EFFECTS OF SELF-MYOFASCIAL RELEASE USING A FOAM ROLL OR ROLLER MASSAGER ON JOINT RANGE OF MOTION, MUSCLE RECOVERY, AND PERFORMANCE: A SYSTEMATIC REVIEW. Int J Sports Phys Ther. 2015 Nov;10(6):827-38.

  9. Smith JC, Pridgeon B, Hall MC. Acute Effect of Foam Rolling and Dynamic Stretching on Flexibility and Jump Height. J Strength Cond Res. 2018 Aug;32(8):2209-2215.

  10. Kasahara K, Konrad A, Yoshida R, Murakami Y, Koizumi R, Sato S, Ye X, Thomas E, Nakamura M. Comparison of the Prolonged Effects of Foam Rolling and Vibration Foam Rolling Interventions on Passive Properties of Knee Extensors. J Sports Sci Med. 2022 Dec 1;21(4):580-585.

  11. Nakamura M, Sato S, Kiyono R, Yoshida R, Murakami Y, Yasaka K, Yahata K, Konrad A. Acute Effect of Vibration Roller With and Without Rolling on Various Parts of the Plantar Flexor Muscle. Front Physiol. 2021 Sep 22;12:716668.



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